報徳学園
99名全部員の思いを乗せ繋いだ楕円球。
何度相手に走られようとも魂のタックルで止め、ボールを奪い返した。
「振れ!」
ハイボールをキャッチすると、報徳陣から逆サイドに展開するよう言葉が飛ぶ。
言葉の通り大きく展開するも、その先でプレッシャーを受け相手ボールに。
なかなか攻撃が繋がらない。
FWとBKが一体となった、報徳らしいランニングラグビーが体現されたのは後半21分を過ぎた頃。
21番が縦へのランから22mを割り入ると、10番が短くキックパス。一度はマークで陣地を返されたが、その5分後、マイボールスクラムから13番・山村和也キャプテンが走り込んだ。
スクラムの度に鳴り響いた、保護者席からのエアバルーン手拍子。
スクラムから出てきたボールを13番が真ん中で当たれば、FWからBK、またFWからBKと当たり、敵陣22mでペナルティを獲得した。
この日、ラインアウトが不調だった報徳学園。スクラムからの攻撃を選択したが、ノックオン。
逆に相手に相手に走り切られ、最後のトライも許してしまう。
インゴールに飛び込まれる姿を見送った15番・桃田涼平選手と24番・竹之下仁吾選手は膝をついた。
最後のインゴールでの円陣。
肩を組み、そして全力でチャージに走り込んだ。
たとえどれだけ点差を離されようとも「最後まで諦めたくなかった。(山村キャプテン)」
「僕たちは心技体を大切にしています。技と体では負けている部分も多いが、心の部分で報徳のラグビーをすれば勝てる、と信じていました。」
力の差を超える、「勝つ」という気持ち。
ただそれ以上に仰星が、強く速かった。
11番・海老澤琥珀選手は言う。「グラウンド外でも引っ張ってくれたキャプテンだった。」
今年、報徳学園は花園で通算50勝を達成した。
「2年生が多くいたチーム。来年、後輩たちがさらに勝利を重ねていってくれる。(山村キャプテン)」
2022年、51勝目から後輩たちが歴史を紡いでいく。