上手くなりたい。上手くなれると思うからラグビーを続けている。|JAPAN XV主将・SO中楠一期(リコーブラックラムズ東京)

桜のジャージーに袖を通すのは、決して特別な人間だけのものではない。

誰よりもラグビーを信じ、誰よりも自分と向き合い続けた人間だけが、その場所に立つ。

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中楠一期選手(リコーブラックラムズ東京)は2025年5月20日、人生で初めて、ゲームキャプテンとしてグラウンドに立つ。

その知らせを聞いたとき、驚きはあった。だが、喜びも不安も飲み込み、静かに言う。

「あまり(ゲームキャプテンということを)考えてないです」

この1ヶ月間、リーグワンでの出場機会はなかった。スタンドオフのポジション争いをした伊藤耕太郎選手に場を譲った、ラスト3戦。

2024年の日本代表活動に選ばれた中楠選手に対して期待が寄せられるほどに、重圧もまた重くのしかかったシーズンだった。

「今シーズンは、自分の中でもすごくきつかったです」

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昨シーズン終了後、初めての日本代表活動へ。そのまま今シーズンに突入し、長期オフを得ることなく20カ月間もラグビーをし続けた。

中でも『日本代表』という初めての環境に飛び込んだことが、どうしたってプレッシャーに変わった。

「一度代表に呼んで頂いたからこそ、日本代表を意識してリーグワンの期間中もプレーしていました。だからこそ自分がパフォーマンスすることに対して多くを考えすぎていた、というか。いらないことをいっぱい考えて、すごくいっぱいプレッシャーを自分で作って、なかなかパフォーマンスも思う通りに上がらずに・・・。悪いサイクルに入っていた感じがあります」

試合に出ることができなかったこの1ヵ月間で、改めて気付いたことがある。

「この1ヵ月は、冷静に自分と向き合えた期間になったな、と思っていて。だからこそセレクションどうこう、ではなく自分は上手くなりたいし、上手くなれると思うからラグビーを続けているんだ、と根本に立ち返ることができました」

NZU(ニュージーランド学生代表)と戦うJAPAN XVに課されたテーマは『レッドライン』。

極限の状態でも“次の仕事”を探し続けること──つまり、疲労や状況に関係なく、動き続けるラグビーだ。

「レッドラインという言葉が、ミーティングでもずっと出ています。テンポのはやい、アグレッシブなラグビーが求められていると感じています」

自らがやるべきことも明確だ。

スタンドオフとして、チームを動かすこと。選手1人ひとりの判断を信じながら、自分の声で、動きで、試合をコントロールすること。

「エディさんが求める形にみんながアジャストできるように、自分のボディランゲージや声でサポートしたい」と意気込む。

「僕がみんなに言っているのは『このゲームを楽しみたい』ということ。自分らしさをみんなが出す中で、エディーさんが掲げる『レッドライン』やラグビー像に対して、セイムページを見ながらみんなが自分らしく楽しめる試合にしたい。桜もつける、貴重な機会です。みんなで楽しめればいいかな、と思っています」

そしてその先に見据えるは、いま目の前にある「自らの成長」、ただ一つ。

「日本代表キャップが欲しい、日本代表に行きたい。もちろんそういう思いはあります。でもあまり先のことは考えていなくて。それ以上に常に自分が成長したいし、ベストな自分を作りたい。そうありたい、と思っています」

ゲームキャプテンとしての責任と、桜のエンブレムに宿る誇りを自信に。

静かに、そして確かに、自分自身を超える。


「ブラックラムズ東京では若手の立場。だけどこの合宿では年下ばかりで、合宿所でも周りを見たら自分が一番年上、ということもありました。『ベテランってこういう気分なんだな』と思いました(笑)」

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