自分の原点のゴールド。|JAPAN XV・FB竹之下仁吾(明治大学3年)

5月20日(火)に大分県別府市でNZU(ニュージーランド学生代表)と対戦したJAPAN XVは、78-28で勝利。

およそ600人の観客が見守る中、未来の日本代表へとつながる道が静かに幕を開けた。

「自分の原点のゴールド」だと言った。

“原点”――そう呼ぶプレーが、いま、1人の青年を強くしている。

明治大学3年、竹之下仁吾選手。フルバックを本職とし、この日はJAPAN XVのバイスキャプテンも任された。

ただし、それは単なる”副将”という役割とは異なる。

「“ゴールドの手本になるようなバイスキャプテン”という立ち位置でした。トークは(吉田)杏さん、(中楠)一期さん、(土永)旭さんがしてくれていたので、僕はひたすらゴールドをして、手本を見せようと思いました」

“ゴールド”とは、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが選手たちに求める「最大限の努力」を意味するキーワード。

「ゴールドエフォート」とも呼ばれ、ひとつのプレーの後、休むことなく次のアクションへ向かう姿勢を指す。どのようなプレーがゴールドに該当するかは、ポジションによって異なる。

この日は、副将に選ばれた責任を全身で体現した。

キックチェイスしかり、自陣への懸命な戻りしかり。ただ立っているだけで汗が流れ落ちる気候の中、とにかくグラウンド中を80分間、足を止めることなく走り切った。

「今日は、行きました(笑)」

充実感を漂わせながら、笑った竹之下選手。

「結構できたと思います。序盤はミスもあったけど、自分の原点であるゴールドで、いいプレーをたくさん出せたと思う。次は試合の入りを修正したいです」

試合終盤になればなるほど、その献身性は輝きを増した。

原点。

そう、竹之下選手にとっての“原点”こそが、ゴールドなのだ。

高校生の頃からそうだった。

ファインダー越しにボールを追えば、ピッチのどこにでも竹之下選手の姿があった。縦100m、横70m、7,000平方メートル四方のあらゆる場所に。

コンタクトの瞬間には写っていなくとも、数コマ後には画角にカットイン。どこからともなく現れる、そんな選手だった。

決して派手なプレーヤーではない。トライを量産するタイプでもない。しかし、それこそが竹之下仁吾というプレイヤーの強みであり、原点。

数値では表しづらい、目立ちにくかったその特長が、いま、エディー・ジョーンズHCの下正しく評価され始めている。

それが竹之下選手の自信となって、力強さに変わった。

なぜ、そこまで献身的に働き続けることができるのか。

過酷な環境下だった一戦をフル出場で終えた竹之下選手に問うと、彼はまた、笑った。

「そうですね・・・。上のステップに行くために、欠かせないもの。バイスキャプテンとして、チームを引っ張るという意味もありました。あとは、今回の試合のテーマである『レッドライン』。全員で限界突破してゴールドを獲っていこう、と話していたので。そういうところが活力、原動力だったかなと思います」

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この日は、かねてからの憧れだったメイン平選手(リコーブラックラムズ東京)との初共演も果たす。

メイン選手からボールを受け取り、自身がトライした場面もあった。

「あの場面は、メインさんの前が空いていた。そこに一期さんが放るやろうな、という予測で先にダッシュして、一番先にメインさんのサポートにつけたからトライができました。良いサポートができたかな、と思います」

予測を行動に変える。だから、結果は出る。

「この合宿中、吸収できたことがたくさんありました。コミュニケーションに、基礎的なハンドリング。メインさんだけじゃなく、一期さんやチャーリー(・ローレンス、三菱重工相模原ダイナボアーズ)といろんな選手から学べたことが大きかったです」

これからは自身の所属する大学に戻って、研鑽に励む。

「明治大学にもいっぱい、15番のライバルがいます。それが明治の良いところでもある。まずはそこで圧倒できるように。『他の選手の方が良いんじゃないか』とみんなに言わせないように。『やっぱ、ジンゴやな』とみんなが言ってくれるように。そんなプレーをしていきたいですし、引き続きゴールドは明治でもお手本となりたい。大学選手権、優勝したいです」

確実に、15番の座をつかみ取る範囲が広がりつつある20代。

いつの日か、桜のエンブレムが左胸に輝くあの赤白のジャージを着て――。

『やっぱ、ジンゴやな』

そう言われる日は、きっとやってくる。

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