5月20日(火)に大分県別府市でNZU(ニュージーランド学生代表)と対戦したJAPAN XVは、78-28で勝利。
およそ600人の観客が見守る中、未来の日本代表へとつながる道が静かに幕を開けた。
5月とは思えない日差しが照り付けた、平日の午後。別府の空に響いた笛の音の下には、齢19――田中京也選手(立命館大学2年、フッカー)の姿があった。
U20世代のど真ん中。にもかかわらず、田中選手が立っていたのは“その上”のカテゴリーであるJAPAN XVの舞台。
桜のエンブレムを胸に、リーグワン選手たちと肩を並べて戦った一戦は、自身の現在地を試す時間となった。
「昨年一緒に飛び級でU20日本代表に選ばれたエイト(白井瑛人、明治大学2年)とは、『自分たちの代が楽しみだね』と話していました。マナト(中森真翔、筑波大学2年)やケンゾウ(田中健想、早稲田大学2年)たち今年のU20世代とも『このメンバーで(U20日本代表活動を)やれたら楽しかっただろうな』なんて話もしてました。でも、今回こうしてJAPAN XVに呼ばれたこと、リーグワンの選手たちと一緒にハイレベルな経験ができたことは、大きなレベルアップの機会をもらえたと感じています」
田中選手の歩みは、常に同年代の一歩先を進んだ。
昨年のワールドラグビー U20トロフィー大会では、飛び級でU20日本代表入り。スコットランドで3試合に出場すると、今年はU23日本代表としてオーストラリア遠征も経験した。
だが、ただ順調にステップアップしてきたわけではない。痛感した「足りなさ」とも誠実に向き合った結果だった。
「基礎のフィジカル、ラインアウトスローの精度、初対面の選手との連携・・・。すべて課題です。レベルアップできる機会を次々にもらっている分、ちゃんと応えなきゃいけない。自分は『まだまだ』です」
謙虚な言葉を重ねる本人とは裏腹に、プレーは指揮官によってしっかりと評価される。
NZUとの試合後、エディー・ジョーンズ日本代表HCが名指しで挙げた「今日良かった3選手」のひとりに、田中選手の名前はあった。
その報を耳にした田中選手は「素直に嬉しいです」と喜びつつも、一層気を引き締める。
「今日は(ラインアウト)スローのミスもありましたし、ボールキャリーでも課題が残った。ちゃんと映像を見て、テストマッチレベルで活躍していく選手になるために修正していかないと、と思います」
リーグワンの選手たちと同じチームで過ごし、試合に臨むなかで、「初対面の人と密にコミュニケーションを取る」ことの重要性にも気づかされたJAPAN XVとしての日々。
「良い階段を上らせてもらっています」と感謝した。
試合後、19歳コンビが笑顔で言葉を交わした相手は28歳のエピネリ・ウルイヴァイティ選手(三菱重工相模原ダイナボアーズ)。「フル出場は疲れたよ」と、流暢な日本語で笑わせてくれたのだという
またこの日は田中選手の両親も熊本から応援に駆けつけた。ウォーミングアップ中、その存在に気が付いたという田中選手は「平日なのに応援しに来てくれました。だからこそ、良い姿を見せたかった。良い姿・・・見せられたと思います。『頑張ったね』と声をかけてもらいました。嬉しかったです」とほほ笑んだ。
JAPAN XVとしての経験は、ともすれば“背伸びしたステージ”だったかもしれない。
けれどその背伸びこそが確かな手応えとなり、自信となれば、次の挑戦を照らす光となる。
「階段を上がらせてもらってる分、フィジカル含めた基礎からしっかり作り直したい。もっと強くなりたいです」
焦らず、驕らず。
これからも誠実に、着実に歩む。