12か国の融合を目指す「紺の戦士たち」東洋大学が歩む、比類なき道

昨季、関東大学リーグ戦1部で過去最高の準優勝を成し遂げた東洋大学ラグビー部。

現在行われている関東大学春季交流大会では、対抗戦・リーグ戦の上位3校ずつが集う“Aグループ”に名を連ねている。

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今季掲げるスローガンは『Navy Warriors』。

命を懸けて国を守るアメリカ海軍の『United States Navy』に、チームカラーである紺色を重ねた『NAVY』。

また今年のチームは過去最多となる12か国の血が融合していることに伴い、世界各国の”戦士”が集まったという意味を含んだ『WARRIORS』。

「東洋大学は、一人ひとりが戦える戦士の集まり」(福永昇三監督)との意味を込めた『Navy Warriors』が錦の御旗として設定された。

文化も言語も異なる者たちが信じ合い、背中を預け合いながら楕円球を繋ぐチームで、今季のキャプテンを任されるはFLステファン・ヴァハフォラウ選手。

「自分のことを話すのは苦手です・・・」と苦笑いを浮かべながら、主将就任の経緯を明かした。

「昨年12月に行われた大学選手権で慶應義塾大学に敗れたあと、アフターマッチファンクションが終了した瞬間に福永監督から『来年はステファンがキャプテンでいこうか』と話がありました。自分としても『やるしかない』という気持ちで。大学選手権の経験は十分あるし、今年はちゃんと上のレベルで戦いたい。自分でよければやるしかない」と腹を括ったのだという。

生まれはニュージーランド。

三洋電機でプレーした父の影響で、1歳~4歳まで日本に滞在。その後7歳まではフランスで過ごし、以降はニュージーランドへと戻った。

札幌山の手高校に進学するため、ふたたび日本にやってきたのは10代なかばのこと。

日本語、英語、フランス語を巧みに操るちょっとシャイなリーダーが、このチームの中心にいる。

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照りつける日差しが、夏のはじまりを予感させた6月1日。

熊谷ラグビー場で行われた第14回関東大学春季交流大会Aグループ 第6節で、東洋大学は昨季の大学選手権覇者・帝京大学を相手に80分を戦った。

試合中の最大点差は58点差。簡単ではないゲームだった。

しかしこの日、点差を離されていた後半に2度、東洋大学はペナルティゴールを選択した。

福永監督は「前半と後半の最初はチャンスがあれば狙ってもいい」と選手たちに伝えていたというが、2つのPG選択はそれぞれ後半19分と32分でのこと。

この判断を問うと、ヴァハフォラウ主将は「リセットしたかった」とその時の気持ちを振り返った。

「そのまま陣地を進め、ラインアウトという選択もありました。でも、一度リセットしたかった。一回この攻撃に区切りをつけて、もう一回ゼロからアタックを始めたかったんです」

0-47を、3-47に。

3-61を、6-61に。

点差を縮めるためのペナルティゴールではない。

自分たちの気持ちをリセットし、「よし、もう一度」と再び攻撃に向かう姿勢を立て直すためのペナルティゴールだった。

倒れても、呼吸を整え、また前を向く。戦うということは、そういうことだ。

一方で、この日テーマに掲げたディフェンスは、5月に行われた早稲田大学戦・明治大学戦から大きく改善した。

最終的にトライを取られはしたが「あともうひと踏ん張りの我慢比べ」(福永監督)。

帝京の猛攻に対しても、足を止めず、低く入り、横のつながりで食らいついたシーンは印象的だった。

このディフェンス力が、間違いなく今季の東洋大学の土台となるだろう。「選手たちもそういう感覚を掴んだと思う」と福永監督は手応えを得た。

ヴァハフォラウ主将も「今日はまだ、自分たちの100%を見せられていない」と言う。

「あと少し、頑張れば。戦えない相手ではありません。この経験が非常に必要だった、と思います。春季大会残りの2試合は、同じリーグ戦を戦う大東文化大学と東海大学。ここで自信をもってラグビーをしたいです。そして夏合宿に行って、ちゃんとご飯を食べて体を大きくして、対抗戦のチームとも戦えるようにラグビーIQを高めていきたいし、マインドセットも準備していきたい。ちゃんと、恩返しをしたいと思います」

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試合後、福永監督が選手たちに伝えた言葉がある。

「これを超えればいいんだもん」

今日戦ったこの帝京大学を超えれば、大学日本一は近づく。甘えを許さない。けれど、希望を否定しない言葉に、選手たちの闘志もみなぎった。

そのためにもう一度、東洋大学はラグビーの基本となる『体づくり』に立ち返る。

「明治大学戦以降、もう一回真剣に取り組んでいます。トレーニング内容もさることながら、ご飯を残さず食べること。いわゆる『凡事徹底』を見直しています。トップになるためには、食べて体を作ることが必要だとみんな感じていると思う。このタイミングで強度を上げて、本当に日本一を目指していきます」(福永監督)

次に帝京大学と対戦する可能性がある公式戦は、大学選手権のみ。

”これを超える”ために。

「悔しさがないと、いい努力に繋がらない。これで努力が真剣な努力に変わるんじゃないか」と話した福永監督。

“Navy Warriors”。

鉄紺の鼓動を、未来へと刻む。

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