「戦えるチーム」を目指して。昌平高校ラグビー部、埼玉2冠を自信に関東大会へ

「まだ、戦える状態には持っていけていない」

4月の終わりのこと。

第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選・準々決勝後にそう語ったのは、昌平高校ラグビー部指揮官・船戸彰監督だった。

関東大会への出場を決めた直後のインタビューだった。

「ミスが続くと自滅してしまう」と、船戸監督は厳しい現実を包み隠さず口にした。

だがそのなかで、確かに光を放っていたのが1年生たちの姿。

「プレッシャーに左右されず、思い切ってプレーできている」と、堂々と、そして素直に楕円球を握るルーキーを見やった。

「何かにハマってるのかもしれないし、性格なのかもしれないけどね」。

船戸監督の笑顔交じりの語り口には、チームに吹き込まれた新しい風への頼もしさがにじんでいた。


プレイスキッカーは10番・神山暖武選手。入学間もない1年生だ

一方で3年生へは、あえて厳しい評価を投げかける。

「彼ら3年生たちがどこまで変われるかが鍵」と期待を寄せた。

チームを“戦える集団”へと押し上げる存在でなければならないのは、どうしたって最上級生。

ピッチに立つ1年生が“風”になろうものならば、試合に出る3年生は“柱”であって欲しい。そんな思いが、言葉の端々に漂った。

広告

それから2週間。

昌平は、第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選・決勝で、川越東に20-12と競り勝った。

終盤まで気の抜けない展開だったが、ルーズボールへの鋭い反応で上回り、逃げ切った。

なにより「試合に出ている3年生たちの意識の変化を感じた」とは船戸監督。県内2冠を成し遂げたその姿には、確かな“進化”があった。

「1人ひとりのタックル精度が上がってきたこと。ブレイクダウンで襲い掛かる気持ちが試合をとおして感じられたこと。ピンチを切り抜けた後にチャンスへと繋げられたこともそうです。縦の推進力も向上して、だからこそオフロードパスも増えた」と選手たちの成長を喜ぶ。

埼玉王者として次に挑む舞台は関東大会。目指すは勝利だが、それだけではない。

「スコアできるチームにならなければ」

フォワードも、バックスも。「前に出る圧力」をアタックでもディフェンスでも出し切り、チャンスを得点につなげる力を身につけたいという。

「そのためには、2人目のサポートを含め、前に出る意識を徹底したいです」

これからの課題は、まさに“得点力”。それが、関東の舞台で試される。


写真提供:昌平高校ラグビー部

「頑張ります」と短く、けれど力を込めて語った船戸監督。

深緑美しき初夏。清々しい空気とともに訪れる、挑戦の夏。

関東大会Bブロック初戦は、6月7日(土)14時キックオフ。相手は山梨県第1代表・山梨学院。

試されるのは、積み重ねてきた日々のすべて。いま、昌平は真の“戦えるチーム”を目指して、新たな扉をたたく。

スポンサーリンク
広告