6月7日(土)に栃木県・佐野市で行われた、令和7年度 第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会1回戦。
國學院大學栃木高等学校(栃木県)は茗溪学園高等学校(茨城県)に13-0で勝利し、Aブロック決勝戦へと駒を進めた。
國學院栃木
「やっぱり、ツネヒデミチ」
その名を口にする声が、あちらこちらから漏れ聞こえた。
この日もやっぱり、福田恒秀道キャプテンは“凄かった”。
後半20分を過ぎた頃、國學院栃木のリードはわずか8点。緊張感漂うなか、茗溪学園がハーフウェー付近から攻撃を仕掛けてきた瞬間だった。
12番・福田キャプテンは、すっと後方にポジションを下げた。
その直後、相手は短くボールを蹴り上げる。落下地点には、福田キャプテンがすでにいた。
難なくキャッチし、数人を交わしてボールを前へと運ぶ。その流れを後続が受け継ぎ、最後は11番・池田健心選手がトライを決めた。
その起点となった、福田キャプテンは言う。
「相手が“スペシャルサインをやろう”って言ってるのが聞こえたんです。だから『何かしてくるな』と思っていたら、キックモーションに入った。だから下がりました」
危機を察知し、備えること。
その嗅覚の裏には、悔しさを糧にした過去があった。
福田キャプテンが後方にポジションを下げ、ボールをキャッチしたシーン
今年1月に行われた、全国高校ラグビー大会・準決勝。桐蔭学園との一戦で、國學院栃木は相手の三次元アタックに翻弄された。
「平面のディフェンスはできていたんですが、(桐蔭の)丹羽選手のキックでやられてしまって・・・。それ以降、裏のキックに備えて、センターの位置にいる人間はしっかり戻ろうと決めていたんです」
それは、天性の感覚だけではなく、敗北から学んだ積み重ね。
聞こえてきた言葉を“音”で終わらせず、“意味”として受け取り、“行動”に変える。
それが福田恒秀道というプレイヤーの真骨頂だ。
いよいよ迎えるは、3年連続となる桐蔭学園との関東大会Aブロック決勝戦。
「(3月に行われた)全国選抜大会で1回戦敗退してから、この6月に桐蔭学園に勝つためだけに練習してきました。今日のアタックのブレイクダウンでは、桐蔭相手では通用しないと思います。だから今晩と明日の朝で課題を明確にして、明日は準備してきたことを全部出したいです」
そう語る福田キャプテンの目に、一点の曇りもない。
率いる吉岡肇監督もまた、言葉に力を込めた。
「1回戦が暑い中の激戦だった、というのは相手も同じ。だから言い訳にはならない。茗溪学園という素晴らしいチームに、今日は13-0。関東新人では21-0。ゼロに抑えるから勝つんです。それが、ウチらしさ。だから明日も、ディフェンスで勝つ」
強さとは、備えること。
その中心に「やっぱり、ツネヒデミチ」がいる。
茗溪学園
ディフェンスを中心に準備を重ねたという茗溪学園。
言葉どおり、この日なんどもディフェンスでボールを奪取した。
だからこのゲームの流れは「ある程度予想した展開だった」と話したのは、石川千暁コーチ。
「ディフェンスは頑張れた。あとはセットプレーから2つトライを取って勝つ、というイメージでした」
この日ゲームキャプテンを務めたのは、2番・山田朔太選手。チームではバイスキャプテンを務める。
「ディフェンスはできました。でも、アタックの継続ができなかった。そもそもアタックの時間がなかったし、アタックしていてもワンフェーズでミスが起こったり、ブレイクダウンで相手のプレッシャーに負けてターンオーバーが起こってしまったり。全体的に自分たちにアタックできるチャンスが少なかったことが敗因です」
用意してきた攻撃の形はあった。
だが実践の中で与えられたプレッシャーが、それを許さなかった。
「アタックを継続して、自分たちの強みを出せる試合をどんどんしていきたい」
展開力のあるバックスと、安定してきたFWのセットプレーが融合すれば、得点力は増すと捉える山田バイスキャプテン。
間もなく本格化する夏。
やりたいことが、目白押しだ。