「やっと、僕たちの番がきた」本庄第一、初の関東へ。信じる5年目の夏

笛が鳴った瞬間、グラウンドにいた選手たちは歓喜に包まれた。そしてベンチで見守っていた新井昭夫監督は、少しだけ目を潤ませた。

「やっと…うちにも順番が回ってきたなと思いました」

本庄第一高校ラグビー部。

監督として迎えた5年目の春、ついに“関東大会初出場”という扉が開いた。

「(関東予選1回戦で)深谷を倒し、(準々決勝で)熊谷を倒して、ようやくたどり着いたこの舞台。これまでの選手たちが見たかった景色を、今の生徒たちが叶えてくれました」(新井監督)

関東大会が懸かった熊谷との一戦は、セットスピードやディフェンスの鋭さで過去最高の完成度を見せた。

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チームを引っ張るのは、11番を背負うキャプテン・亀田優斗選手。

秩父市出身で、中学ではサッカー部に所属していたが、高校進学を機にラグビーへと転向した。

「(サッカーでは)サイドバックをやっていたんですけど、向いてないなって(笑)本庄第一の練習会に参加して、自分はラグビーをやってみたいと思いました」

自らの意思で、ラグビー部に飛び込んだ。

1年時はベンチ外が多かったが、悔しさを糧に成長。2年から本格的に試合に出場し、今ではチームの顔となった。

「(関東予選準々決勝で)熊谷に勝てたのは、監督にとっても僕たちにとっても特別なことでした。新井監督体制史上、初めて熊谷高校に勝利しました」と喜んだ。

そんなチームの元気印は、1年生スクラムハーフの矢野壱靖選手。

小学4年でラグビーを始め、中学時代はセンターとしてプレーしていたが、高校入学直前の3月にスクラムハーフへと転向。わずか1か月で新しいポジションをモノにすれば、自らのサイドアタックでトライを量産した。

「今日は100%、全力を出し切れました。トライも決められてよかったです。でもディフェンスでは、もっと下に入って倒せるようになりたい」。冷静に自己分析をする姿に、これからの3年間に向けた期待は高まる。

試合中も先輩たちに物怖じすることなく指示を出し、ゲームを動かす。

「上下関係とか気にせず、プレー中は自然に声が出ます」

1年生らしからぬ胆力と判断力が、チームに新しいリズムを生んだ。

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この快進撃の背景には、“実戦型”の練習環境もあった。

大学生との合同練習、特に立正大学とのセッションでは、リアルなゲーム展開を意識しながら、アタックとディフェンスの質を高めてきた。

「練習中でもプレーを止めずに、話し合いながら改善します」(亀田キャプテン)

勝つための「学び」を止めない姿勢が、試合中の修正力となって発揮されている。

亀田キャプテンは言った。

「関東大会初出場は、僕たちにとって“恩返し”でもあります」と。

チームの歴史は、まだ浅い。だが、誰よりも濃密な4年がここにあると信じて疑わない。

届かなかった先輩たちの想い、託されたジャージー。それらすべてが、本庄第一ラグビー部に根を張った。

「まだ通過点です。関東に行って、もっと上を目指します」

まっすぐな言葉とともに、挑むネクストステージ。

埼玉県第4代表として第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会に出場し、Eブロックの頂点を目指す。

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