「先輩が見せてくれた花園予選決勝の景色。その先を、自分たちが見なきゃいけない」熊谷工業の挑戦

今年の熊谷工業は、新旧混ざり合うチームだ。

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昨年、全国高等学校ラグビーフットボール大会 埼玉県予選で14年ぶりとなる決勝進出を果たした。

記録は作ったが、12-45で涙を呑む。花園には一歩、届かなかった。

今季ゲームキャプテンを務めるCTB冨田将生選手は、その悔しさを胸に最終学年を迎えた。

「昨年の決勝戦は、僕も出場していました。トライも取れたのですが、あの時は自分の持ち味であるランだけでトライしました。でも3年生になった今年は、それじゃ戦えない。もっとコンタクトプレーを磨かなければ、と思っています」

体づくりに励み、昨秋から5㎏ほど体重を増やしたという。

足もとに履くスパイクは、同じポジションだった昨年の3年生から譲り受けたもの。決勝戦のあと、静かに手渡された。

「使わないから、やるよ」

それ以上の言葉はなかったが、思いをしっかりと引き継いだ。

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冨田選手曰く、今年の特徴は「真面目さ」にあるという。

「みんな素直で、人の話が聞ける。だから修正力があります」

昨年のようなパワータイプの選手が少ない分、チームワークと戦術理解で勝ちに行くスタイルを目指している。

チームを率いる橋本大介監督も、その変化を肌で理解する。

「昨年は3年生が主体のチームだったので、今年は経験の浅い子が多い。だけど真面目で、声も出せる。少しずつだけど、まとまり始めてきた」と”今年流”の輪郭ができあがってきた。

両翼には1年生が入ることもあり、スピードと突破力を武器にチームを引っ張る。勢いのある1年生の存在が、良きエッセンスとなっている。

WTB林篤希選手は、その”勢いあるルーキー”のうちの1人だ。

入学後1ヵ月経たずして、なんと公式戦に先発出場。4月のうちにハットトリックを記録する堂々たる戦いぶりを披露すれば、その後もコンスタントにトライを重ねる。

ウイングとして最大の仕事である、トライを取り切るというエネルギーと嗅覚は抜群。こぼれ球をトライゾーンに持ち込む姿を見た橋本監督は「必要な時間にトライを取ってくれる。チームを勇気づけてくれる」と賞賛する。

また兄・蒼太選手は今季のキャプテンを務めており、兄弟プレイヤーが多い熊谷工業らしさを地で体現する。

兄は左プロップ。弟はウイング。兄が試合を形作り、弟が仕留めるという構図もまた、なんとも熊谷工業らしい。

新たに吹く風。

しかしそれは「昨年、花園予選で決勝に進出できたことがチームの“基準”を上げてくれたから」と橋本監督は語る。

これまでのOB・OGらの活躍があったからこそ、今年の熊谷工業が形づくられる。

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今年、熊谷工業は橋本監督体制史上最多となる26人の新入生を迎え入れた。経験者も多く「今年のチームは本当に伸びしろがある」と指導陣の期待も高い。

「先輩が見せてくれた花園予選決勝の景色。その先を、自分たちが見なきゃいけない。今年こそは、という思いです」(冨田ゲームキャプテン)

トライの喜びも、悔しさの記憶も。受け継がれる想いを、足跡で繋げて。

第73回関東高等学校ラグビーフットボール大会に、埼玉県3位として挑む。

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