ラグビーの季節がやってきた。
約半年ぶりの公式戦。そして、3年生にとっては最後の戦い。
花園を目指し、青春をかけて戦う選手たちをレポートする。
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試合概要
【対戦カード】
埼玉県立草加高等学校(以下、草加)v 合同B*
*合同Bは、鷲宮、草加東、草加西、越谷南、八潮南、川口青陵の計6校からなる合同チーム
【日時】
2020年10月3日(土)11:30キックオフ
【場所】
熊谷工業グラウンド
試合結果
草加 34 – 0 合同B
試合展開
前節・早稲田本庄戦では、雨の影響もありペナルティが多くFWのポジショニングバランスが悪かった、と振り返る草加・小林剛監督。
「今日はグラウンドコンディションが良いので、練習の成果を出し切りたい。ただオプションが増えるとどうしても判断に迷うことがあるので、いかに無駄な時間をなくすことができるかが今日のポイント。」と話した。
一方の合同Bは、最小3名、最大でも8名が6校から集まった30名強のチーム。
まとめるは、土谷英寛監督(八潮南高校)だ。
「夏休みや週末などしか練習できず、一つのテーマを定着させることが難しい。」
だからこそ、注目するのはプレーではなく「所属が異なる選手たちを一人の高校生がまとめる、そのメンタリティ」だという。
一人の高校生とは、キャプテンの上原選手(草加東高校)。司令塔の10番を務める。
***
試合は、なんと前半20分までスコアレス。
試合開始直前、合同Bの土谷監督が「アタックを1人にさせるな、全力でサポートにいけ」と掛けた言葉が効いていた。
全力で当たる、全力で止める、全力で歓声を送る。合同Bの気迫が会場の空気を支配する、そんな試合序盤だった。
対する草加も、ただの合同チームと位置付けずきちんと対策を練っていた。
キープレーヤーを抽出し、チームとして対応策を持っておく。
その効果を発揮しだしたのは、前半も終わりに近づいた頃。ファーストトライを決めた前半20分、選手たちから「一回トークしよう、やりなおそう。」「次どうするか考えよう」と元気な声が聞こえてきた。
オプションと、判断。
後半は、草加が計4トライ。
キャプテンであるスクラムハーフの吉田飛翔選手が、スクラムからボールを持ち出しフェイントで突破を図る場面もあれば、No.8がスクラムにボールを投入するシーンもあった。
両ウイングは、後ろの方から大きな声で誰が何をすべきか声を出し続けた。
もう一度。オプションと、判断。
狙っていたゲームで、完封勝ちをおさめた草加。それでもディフェンスが修正点という。
次戦は、Aシードで優勝最有力候補の川越東。
「ラグビーは判断のスポーツ。草加の選手たちにとっては経験したことのないレベルのラグビーになると思うが、勝つための準備をしっかりとしたい。」
***
試合後のコメント
草加 小林監督
「準備してきたことを、選手たちが判断して選択してくれた。零封で抑えたが、ポジション取りなどもう一回ディフェンス面を確認して川越東に備える。」
草加 吉田キャプテン(9番、3年生)
「前半の苦しい時間帯には、『自分たちのミスが出ているだけ。ミスをなくせば怖いことはない』と声を掛けた。齋藤直人選手(サントリーサンゴリアス)のようなスクラムハーフになりたい。」
合同B 土谷監督
「悔しいです。先週の草加の試合を見て、ポジション毎の対策を各学校に送りそれぞれで練習を重ねていた。1年生の頃から顔見知りで、同じ合同チームでプレーしてきた3年生も多い。平日は全体練習が出来ない中、工夫してよくやってくれました。」
合同B 上原キャプテン
「1年生の清水選手(11番)が、ラグビー始めて間もないにも関わらず、こういう大事な試合でみんなの士気を上げるようなプレーをしてくれた。MVPです。」
最後のノーサイド
■合同B 土谷監督から、選手たちに向けてのメッセージ
「お疲れ様、そしてありがとう。各学校まともにラグビーもできない人数の中、『はい今日から同じチームです』と言われても簡単にチームになれる訳ではない。でもそこを乗り越え、チームのために体を張って、疲れても足を止めずにプレーしてきた。One for allの精神を体現してくれた選手たちを、誇りに思う。」
■合同B 上原キャプテンから
①3年間ともに戦ってきた仲間に向けてのメッセージ
「最初は仲良くなれるか不安だったが、積極的にコミュニケーションを取ったら少しずつ仲良くなれた。それがプレーに表れ、一つのチームになることができたと思う。試合中も『こいつだったら任せられる』っていう信頼関係が生まれた。みんなが支えてくれたから、1年間キャプテンを務めることができた。感謝している。みんな大好きです!」
②準々決勝に進んだ草加に向けてのエール
「次の相手はとても強いが、なんとか勝って少しでも勝ち進められるよう頑張って欲しい。」
■草加 吉田キャプテンから、合同Bへのエール
「強いプレーヤーが多く、警戒して試合に臨んだ。(実際に体をぶつけて)とても強かった。」
ともに笑って、膝の皮が剥けるまで一緒に戦って、負けて悔しくて声を上げて泣くことができる仲間を得た。
本気で戦ったからこそ、選手もマネージャーも先生も、涙を流した。
彼らはOne Teamだった。
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