「胸張っていい」大阪朝鮮v昌平(2回戦)【第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会】

2nd 30mins

後半に入ると、突然雨が降りだした。朝確認した1時間毎の天気予報にはなかった、雨。最初はパラパラと、しかし突然暴風雨に変わる。

目も開けられないような10分程を過ごした後、グラウンドに表れたのは綺麗な虹だった。

美しい弧を描いた、はっきりとした色の虹はよく見ると二重虹。ものの数分で、左端から姿を消していった。

青春をかけて闘う高校生たちにエールを送るような、はたまた試練を与えるような。そんな不思議な、わずか15分程の時間が続いた。

何とか1トライを取ろう、と必死に挑んだ昌平フィフティーン。

「出ろ!ギリギリまで50㎝!」「昌平のラグビーやんぞ!」グラウンドからは、常に自分たちに矢印が向けられた言葉が聞こえてきた。

御代田監督からも、短く。「闘うぞ」と一言。今年のチームテーマは『闘』。最後まで、闘うことを追求する。

すると、自分たちの強みであるジャッカルが再び決まるようになった。15番・北川拓来選手のラインブレイクから敵陣深くに入り込む回数も増えた。

最後まで、昌平らしいラグビーにこだわった。

「昌平、最後まで!」「顔上げろって、昌平!暗い顔すんな!」

最終盤、大阪朝鮮に立て続けにトライを決められると、黒埼キャプテンに代わってゲームキャプテンを務めた山口大悟バイスキャプテンはそう、仲間を鼓舞し続けた。


物心ついた頃からラグビーを始めた山口バイスキャプテン。花園が久しぶりの実戦だったが、2試合ともに体を張り続けた。春からは国士舘大学でラグビーを続ける

インゴールラインまであと数センチ、という所まで何度も迫った60分。だけど、どうしてもその数センチを越えることが出来なかった昌平。ノーサイドの笛が吹かれた時には、第2グラウンドの年季の入った手動式のスコアボードに「43-0」と表示されていた。

大阪朝鮮の金勇哲キャプテンは言った。「今日は絶対無失点で抑えよう、と試合に臨んだ。1回戦で1トライ取られてしまっていたので、成長できたのかな、って思います。」


途中出場の25番・金勇哲キャプテンも後半24分に1トライ

試合が終わり、昌平・御代田監督に選手たちへ掛ける言葉を伺うと、涙を堪えながらこう応えてくれた。「良く頑張ってくれました。よく闘ってくれました。胸張っていいよ、って。思っています。」

0点。だが、やりたかった昌平ラグビーは、全てグラウンドで表現した。

実は花園開幕前、國學院栃木高校と練習試合をした際にはもっと大差で負けていた。そこから、準決勝進出を決めた(1月3日時点)大阪朝鮮高校相手にここまで仕上げてきたのだ。

 

昌平高校、花園での通算成績は2勝2敗。悲願の勝ち越しは、来年以降に託す。

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