栃木県(國學院栃木高)×大分県(大分東明高)
それぞれが単独チームとして出場している栃木県と大分県。実はこの試合が、初めての対戦だった。
だから1回戦で劇的な勝利を収めた直後、栃木県・吉岡肇監督は選手たちに「しっかり自分の目で試合を見なさい」と予定を変更し大分県 対 愛媛県の試合を観戦させていた。
「ここで負けたら、1回戦での勝利が薄まってしまいますから。」
しかし、目標としていたゲームに勝利した次のゲームほどモチベーションの作り方が難しいゲームはない。
「花園でも連戦はありません。戦術を考えるのは(吉岡)航太郎コーチの仕事で、監督の役目は選手たちの気持ちを整えること。」
チーム一丸となり、2回戦に挑んだ。
試合は栃木県15番・青栁潤之介選手のノーホイッスルトライで幕を開ける。
開始僅か1分で7点を先制するが、ベンチからは「今のは忘れて!」と吉岡監督の声が飛んだ。
選手たちも「今からがスタートだと思って!0-0だよ!」と意志を統一する。
接点で激しく当たる両チーム。
ブレイクダウンでペナルティを誘い合う展開が続く。
一方の大分東明はゴール前で得たペナルティでPGを選択すると、13番・浦山丈キャプテンがしっかりと沈め7-3。
前半7分、3点を返した。
「國栃、もう一回ディフェンスからいこう!」
声を掛けるは栃木県10番・伊藤龍之介キャプテン。
「國栃、プライドだ。守るよ!」
前日の疲労が残る選手たちを、キャプテンの声で鼓舞する。
しかしラインアウトモールで認定トライを奪うは大分県。
レフリーがポール下に駆け寄り長い笛を吹くと、大分県のFW陣は声を上げ喜んだ。
前半25分、7-10と逆転に成功する。
流れを明け渡しそうな展開にも、1回戦でのタフなゲームを勝ち切ったチームは強かった。
取られたらすぐに取り返す栃木県。
グラウンド横幅いっぱいにボールを振ると、最後は14番・大友佳介選手が飛び込んだ。
14-10、栃木県が再びリードを手にし前半を折り返す。
後半も栃木県の得点でスタートする。
FB青栁選手の「裏」コールに反応したボールキャリアがグラバーキックを蹴り込むと、攻撃は繋がり14番・大友選手がこの日2本目のトライ。
後半3分、19-10とリードを広げた。
後半ベンチに下がった櫻井瑛太バイスキャプテンはウォーターに役目を変え、チームをサポート
勢いに乗った栃木県は、続いて50:22キックを決める。
抱き合って喜ぶ栃木陣。対する大分陣は「モールディフェンス来たよー!」と笑顔で挑む。
互いのプライドがせめぎ合う接点際、両チームのディフェンスが光り、ともにターンオーバーを繰り返した。
モールからの攻撃では最大のキープレーヤーだった大分5番・石川東樹選手
およそ20分間、ボールが行ったり来たりする状況が続くと、最後の10分間で畳み掛けたのは地元・栃木県代表だった。
左右にボールを回しながらFB青栁選手にボールが回ると、縦に抜け相手との間合いを図る。絶妙なタイミングでボールを放れば、外のスペースを駆け上がったNo.8北村優選手にボールが渡ってトライ。
後半23分、24-0と2トライ差をつけた。
最後のトライも、またしてもエース・青栁選手が起点に。
ボールを持つとゆっくりとスピードを緩めながら走り込み、サポートを呼び寄せてからポイントを作って一気に展開。最後は伊藤キャプテンが縦に抜けた後、11番・島﨑聖弥選手がトライを奪った。
31-10、栃木県が準決勝へと駒を進めた。
「大分東明の横山コーチは、(國栃・吉岡)航太郎コーチの早稲田大学時代の同級生。航太郎コーチは『大分強いぞ』と言っていましたから。勝てて良かったです。」とホッとした表情を見せた栃木県・吉岡監督。
天皇杯得点として栃木県に44ポイント以上もたらすことを確定させた大きな勝利に「ようやく栃木県に恩返しができたかな」と呟いた。
準決勝の相手は、ディフェンディングチャンピオンの福岡県代表。
「栃木県の国体最高位は3位。田村熙(現・東京サンゴリアス)たちがいた時の国体で、その時の準決勝の相手も福岡県でした。ラストワンプレーで逆転を許してしまい、決勝進出ならず。そのリベンジです。(吉岡監督)」
一戦必勝。昨冬の花園に続いて、まだ見ぬ景色を掴みに行く。
大分県・白田誠明監督
いつものムードメーカーが不調でバックスは元気なかったが、フォワードは栃木さんと互角に戦えた。満点近い点数をあげられるのではないか。
花園になれば、FWで一番真面目な(ダウナカマカマ)カイサも戻ってくる。(国体はオーバーエイジのため不出場)
良い経験をさせてもらいました。