託された「俺らの分まで頑張ってくれ」東海大相模、悲願の神奈川県王者に。「高い壁で居続けてくれたことに感謝」|東海大相模×桐蔭学園|第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会神奈川県予選 決勝

最後のノーサイド~桐蔭学園~

曇天の下、グラウンドに姿を現した桐蔭学園の選手たち。

ラグビーボールでリフティングをしたり、バレーボールのトスをしたりとリラックスした表情だったのは司令塔・矢崎由高選手。

左腕に巻かれたテーピングには、大きく『屈』の文字が書かれていた。

試合は、桐蔭学園の先制でスタートする。

東海大相模のオフサイドで3点、オーバーザトップでもPGを選択すれば、前半11分には6点をリードした。

しかしロングキックがデッドボールラインを割ってしまったり、ラインアウトをスティールされたりと狙い通りの攻撃は組み立てられない。

次第に東海大相模の圧力は増し、ゴール前まで攻め込まれるとキャリーバック。

自陣5mでの相手ボールスクラムでFKを与えれば、クイックスタートから押し込まれファーストトライを許した。

11番・白石颯選手の「盛り上げていくぞ!」の声。

松田怜大キャプテンも、一つひとつのプレーに気を配り、ラックに掛けるFWの枚数を指示した。

すると、桐蔭学園にもトライチャンスは訪れる。

後半7分、ラインアウトからの攻撃をしぶとく続けると、いくつか縦に抜けながら最後は14番・松田キャプテンがポール真横に押し込んだ。

7-13、これで逆転。

桐蔭学園が流れを掴んだ、かと思われた。

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しかし想定外は、攻撃が繋がり切らなかったこと。

例えばターンオーバーした直後、ラックサイドを松田キャプテンが一気に駆け上がったが、相手の好守備に阻まれフィニッシュまで持ち込めない。

その後も何人もの選手たちがゲインを切り続けたが、ミスも重なりインゴールまで辿り着かず。

60分通して、フィニッシュメイクに苦しんだ。

後半26分には東海大相模に逆転のトライを許す。

後半ロスタイムに突入した時のスコアは、14-13。1点のビハインド。

相手がFW戦で時間を使う中、ペナルティを獲得し最後の望みをかけゴールラインに迫った。

しかし今度は自らが反則。

花園連続出場記録は、7で途絶えた。

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春から苦しかった。

選抜大会では準決勝敗退。

関東大会はCブロックで戦った。

夏、菅平に上がっても予定を完遂することなく下山。

「この代は、入学した時からコロナ。システム的なところが最後上手く機能しなかったかな、と。練習時間もそうです。」と話すは藤原秀之監督。

最後の一手が繋ぎ切らない攻撃が続いた決勝戦。

考え、同じ絵姿を描き、体に指令を送るその一連に、昨年とも一昨年とも異なる難しさがあった。

「最後の最後まで、失敗で終わってしまいましたね。攻めている時間はうちの方が長かったと思うんですけど。力のないチームは、こういうチームです。」

藤原監督は、言葉少なに振り返った。

バックスタンドへの挨拶を終えると、ベンチ前で深く頭を下げた松田キャプテン。

零れ落ちる涙を止めることができなかった。

そんな姿を目にした矢崎選手は、そっと近づいて頭を抱く。

矢崎選手は最後まで松田キャプテンに言葉を掛けながら肩を抱き、2人でロッカーに引き上げた。

身支度を整え、会場の外での挨拶を終えると、方々帰路についた桐蔭学園の選手たち。

しかし今度は矢崎選手が木陰に座り込むと、立ち上がることができず。

じっと1人、自分だけの時間を作った。

そんな矢崎選手を見つけ寄り添ったのは、松田キャプテン。

2人は少し距離を取って、腰を下ろし肩を並べた。

暫くすると後方では東海大相模の選手たちが保護者への挨拶を始めたが、背を向けたまま、ただ前だけを見つめた。

最後まで絶対に振り向かなかった、矢崎選手。

最後、立ち上がって東海大相模の様子を見つめたのは松田キャプテン。

その傍らには、ずっと藤原監督が寄り添っていた。

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試合後コメント

藤原秀之監督

残念な結果でしたね。強いほうが勝ち。1点でも上回った方が勝ちです。

――この代で一番苦しかったことは
入学した時からコロナ。練習時間含め、システム的なところがうまく最後機能しなかったかな、と。

今日は最後の最後まで失敗で終わってしまいましたね。攻めている時間はうちの方が長かったと思うんですけど、力のないチームはこういうチームです。

――3年生に掛ける言葉は
お疲れ様、の一言です。

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