早稲田大学
「強かった、の一言に尽きるかなと思います。」
試合後、吉村紘バイスキャプテンが一番最初に口にしたのは、相手への敬意だった。
3年生の岡﨑颯馬選手(13番)もまた、「完敗です。その一言に尽きる」と語り出した。
自分たちがこれまで積み重ねてきたことを出そう、と挑んだ一戦。荒ぶるだけを目指した。
だが「点差が開こうとも、帝京大学さんの圧力が変わることはなかった。そういった面で完敗だな、と思っています。」
決勝戦という舞台で体をぶつけあって分かった「相当な差」。
岡﨑選手は続ける。
「決勝戦でこんな一方的な試合をされて。アカクロのジャージを着る者として、アカクロをまとう責任もあるし、150人の部員を代表してグラウンドに立つ責任もある。最後まで戦う姿勢を示そう、と思っていました。」
ピッチ上で最後まで声を出し続けた理由を、そう説明した。
「今日試合に出たメンバーは、この悔しい思いを忘れないこと。帝京大学だけじゃなく、明治大学など自分たちよりもレベルの高い大学を意識した練習を、毎日の練習でどれだけ積み重ねることができるか。」
先発メンバーの半数以上が、来シーズンもチームに残ることを前向きに捉える必要がある1月8日。
相良組から学んだことは数多い。
「4年生やリーダー陣だけでなく、チームの核となる選手たちが思ったことを口にできていた。チーム全員で勝とう、という雰囲気がありました。」
ノーサイド後、抱き合ったSH宮尾選手と帝京・本橋選手。「京都成章高校の同期と国立という舞台で戦えるのは光栄なこと。勝っても負けても『ありがとう』だった。僕たちにはあと2年ある。『またやろう』と話をしました。(本橋選手)」
多くの部員と同じように、岡﨑選手にとっても『アカクロ』は幼い頃からの憧れであった。
満員の国立競技場で行われる早明戦を観て、いつしか志すようになった早稲田大学ラグビー蹴球部。
「どれだけ相手に良い選手がいようとも、下馬評を覆す早稲田の緻密さ、展開ラグビーに憧れていました。」
だからこそ、憧れのアカクロを受け継ぎ次の世代へと繋げるため。最上級生になる来シーズン、胸に秘める想いは人一倍だ。
「まだまだ足りないことがある。しっかりと今日の試合を振り返って、来年はこの舞台で自分たちが勝てるように。頑張っていきます。」
バックスタンドに向かって、頭を下げ続けた。
最後に、吉村バイスキャプテンの言葉を紹介して、2022年度の大学ラグビーを締め括りたい。
「それでもぼくたちのこの1年を否定したくはない。自信を持って、引退したいなと思います。」
この日奪った20得点は、全て4年生の手と足が重ねたものであった。