長野県上田市菅平高原・サニアパークにて行われた、第10回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
島根県代表・石見智翠館高等学校は、予選2位グループで組まれたプレートトーナメントを勝ち上がり、見事優勝を果たした。
予選Aプールを1勝1敗の2位で通過した石見智翠館は、プレートトーナメントでも強さを発揮。
中四国でしのぎを削る松山聖陵(愛媛県代表)、倉敷(岡山県代表)に勝ち切ると、準決勝ではなんと大分東明(大分県代表)と同点を演じる。
抽選の結果、決勝戦へと駒を進めた。
反対の山を勝ち上がってきたのは、昨年度の花園王者・東福岡(福岡県代表)。
公式戦では、まだ一度も勝利を収めたことのない相手である。
迎えた、プレートトーナメント決勝戦。先制トライを奪った。
ペナルティからクイックスタートを切ると、強フィジカルの持ち主・祝原久温選手を当て、ブレイクダウンを作る。すぐさま開けば、走り込んだのは加島優陽キャプテン。
7点を先制、勢いに乗った。
その後東福岡に2トライを連続で決められ逆転を許すが、後半2分、セットプレーから祝原選手が走り切って14-14の同点とする。
しかし直後、再び東福岡にトライを決められ5点のビハインドに。
ここで流れを変えるプレーが飛び出す。
グラウンド中央で大きく蹴り込んだのは、石見智翠館。そのボールに先に追いつくは、加島キャプテン。
起死回生の逆転トライが決まった。
「ヒガシさんはフィジカルが強いので、まともに当たってもやられてしまう。裏が空いていることが多いので、蹴ってチェイスしよう、というプランでした。(出村知也監督)」
作戦が的中した。
そのほかにも東福岡対策は十分だった。
できるだけラックを作らず、オフロードで繋ぐこと。寝たらボールを置かずに、転がそう。
その後互いに1トライ1ゴールずつを重ねたが、全員で2点差を守り切り、見事勝利を掴んだ。
「価値ある1勝です」と出村監督が嬉しそうに話せば、今春から部長に就任した安藤哲治氏も「セブンズと言えど、東福岡に公式戦で勝てた。ものすごく価値のある1勝です」と目尻を下げる。
実は出村監督、決勝戦の登録メンバーにあるメッセージを込めていた。
「いつもよりも、九州の子、そして3年生を多く入れたんです。3年生にとってはラストイヤー。九州のチームを相手に勝ってこい、と選手たちを送り出しました。」
12人中4人が福岡県出身。
日頃から練習試合を重ねる相手だからこそ、勝って恩返しをしたかった。
福岡県出身者のうちの1人であり、入学直後から試合に出場し続けている祝原久温選手(2年生)は言った。
プレートトーナメントで優勝できて嬉しい。だがそれ以上に「楽しかったです」と。
「中学時代、東福岡の沢田海盛さんは福岡県選抜の先輩でした。他にも見知った顔がたくさんいて、楽しかったです。」
地元を離れ、島根県の学校で学ぶことを選んだからこそ「倒したかった相手。勝てて良かったです」と大きくはにかんだ。
祝原選手がトライを決めると、仲間が「サイコー!」と駆け寄った
大会パンフレットには、各チームのメンバー表とともにアピールポイントが掲載されている。
石見智翠館の欄は、この一文で締めくくられていた。
「全国の舞台でプレーができる『感謝』の気持ちを忘れずに、最後まで諦めずプレーをしたい。」
石見智翠館にとって花園以来となった全国大会。
新チームになり初めて挑んだ全国の舞台は、『感謝』と諦めずにプレーを続ける『エナジー』で溢れていた。