365日目 ~桐蔭学園
桐蔭学園のロッカー前には、この日背番号をもらった選手たち1人ひとりの決意を書き込んだ、大きな模造紙が貼られていた。
そして、チームとしての覚悟がひとこと。
「桐蔭学園ラグビー部は、ラストワンプレーまで徹します。」
今年のスローガンである『徹』。
昨年は、ゲームプランを徹しきることができずに敗戦。
だから今年は、必ずや最後の1秒まで。
体を当てた。
PGで3点を重ねた。
徹した60分間だった。
「決めごとをやり切れずに終わることは一番悔しい。だから自分たちは最後まで決めたことをやり抜こう。」
それでもし負けてしまっても、それが自分たちの実力だから仕方がない。どれだけ勝っていても、どれだけ負けていても、自分たちがやることは変わらない。
信じてやり抜く。ただ一つの覚悟を城キャプテンは仲間に伝え、試合に挑んだ。
37点差をつけた後半6分の選択は、ペナルティゴールだった。
今年のチームの始動は、2022年11月20日(日)まで遡る。
昨年度の決勝で東海大相模に敗れた、僅か数時間後のことであった。
試合後すぐさま帰路についた城キャプテンら当時の1・2年生は、寮生、そして学校の近くに住む選手たちに「ちょっと練習しようぜ」と声を掛け合い、グラウンドに出る。
時間にして、2時間ほど。
試合に出ていなかったメンバーは走り込みを。他のメンバーもソリ引きや基礎練習を繰り返した。
城、白井、諸田、田嶋航央(24番)。前田麟太朗(3番)に川口ら、1年後の同じ舞台で背番号をつけるメンバーが揃った。
暗くなるまで行ったのは、『いつも通り』の練習。
そして誓う。
「もう終わったし、始まったから。頑張ろう。」
そうして始まった1年間。
「とても短かったです」と城キャプテンは言う。
全国選抜もセブンズも、夏合宿も国体も。「本当にあっという間で、つい昨日のことかのように思います。」
364日間、必死に頑張ってきたと振り返った。
新チームが始動して以降、『11月19日の神奈川県大会決勝で勝つこと』が絶対目標。
たとえ関東、全国の舞台で優勝しようとも、ブレずに掲げ続けたのは神奈川王者の奪還、ただ一つだった。
だからノーサイドの瞬間は「安心しました」と、幾分柔らかな表情を見せた。
これから始まる、プラスアルファの日々。
花園に向けて出発するまで、残された35日をどう過ごすのか。
神奈川県内11連勝を手土産に、次なるターゲットへ。
「花園で優勝を目標とすることはもちろん。ですが大会の入りはとても重要。1試合目にフォーカスしてやっていこうと思います。(城キャプテン)」
キャプテン、そして監督は口を揃えて「花園では強いチームとやりたい」と言った。
試合後コメント
藤原秀之監督
今日は手堅く、ミスが少ない方を選びました。後半15分ぐらいから流れが一気に来たので、点はある程度入るだろうなと。30~40点の試合は想定していましたが、いけば40~50点。最後までいければ60~70点かな、と。FWが前進し始めた頃から、相手も疲れてきた様子が見てとれました。
今日の出来は7割くらいです。FWとBKの継続の連携部分で、今日の試合は及第点をあげられないかな、と。夏合宿で一回やってきているので、もう一回復習する感じです。(白井・吉田らの個人技も光りましたが)あの辺が目立っているようだと、まだ良くないですね。彼らがボールを持つ時間が短くなって、もっと多い人数がボールを触るようなラグビーができれば、もっと面白くなるはずです。
花園には、SO萩井しか出場したことがありません。花園を知らない初心者が大会に行く、という感じです。花園を知らない子どもたち。今日の結果は、364日の結果なので。花園出発までの35日間の逆算で、どこを強化するかもう一度生徒と話し合って、煮詰めていきたいと思います。
城央祐キャプテン
昨日、(前キャプテンの松田)怜大くんから「頑張れよ」と連絡を頂きました。「攻め続ければ大丈夫。俺たちみたいにならないように、自分たちが決めたことを1試合60分間やりきれよ」と。
今日は決め手という決め手はなかったのですが、FWが1試合通して体を当て続けられたことが、結果的に良い流れを持ってこれたのかな、と思っています。
(ノーサイドの笛が鳴った瞬間は)安心しました。ここで負けることは過去の先輩たちもありましたが、2連敗は過去一度もない。負けた次の年には必ず勝っている、その歴史を繋げたことに安心しました。
花園で過ごす2週間は、とても成長できる時間だと思っています。そんなに長くはないですが、その中でいかに自分たちが成長できるかが優勝に関わってくると思う。これからの1ヵ月も大事ですが、花園での時間が一番大事かなと思います。
白井瑛人バイスキャプテン
自分たちの一つの目標であり、昨年の反省だったこの神奈川県決勝の舞台。ですが意識しすぎることなく、また緊張することなくいつも通りやろうと声を掛けて臨みました。
今日のテーマは、体を当て続けること。1年前にできなかったことであり、僕たちがやらなければいけないことでした。なので今日は一度立ち返って、ゲームプランを組んでいます。
これから花園に向けて、自分はバイスキャプテンとして、毎回の練習でハードワークし続けること。背中で常に示すこと、をまずはしていきたいです。そしてバックスのリーダーでもあるので、FW寄りのチームではあるのですが、しっかりとバックスで前に出られるようなチームにしたいな、と思っています。
SO萩井耀司選手
昨年は15番で出場し、負けました。昨年の敗戦を良いように自分の中で変えて、15番の視点でどこが空いているのか、この選手はどういうプレーが強いのか、と整理して、10番のプレーに活かしてきました。
各選手の特徴、そして攻めていきたい部分を考えられた結果、今日は前半から後半にかけていい流れで試合を進めることができたと思います。
このチームで花園経験があるのは僕ひとり。でも僕はリーダー陣という立ち位置ではありません。それでもゲームメーカーとして、チームの中心に立たなければいけない人間。花園がどういう雰囲気なのか、いかにワンプレーで流れが変わるのか、という所をチームに伝えていき、目標である花園優勝に向けて自分が中心となって頑張っていこうと思います。