初陣、そして掴んだ手応え
1ヵ月のFW合宿があったからこそ『ギリ戦えた』
何度も取られたパイルアップ。
モールでも、ボールキャリーでも、がっしりと抱え上げられボールを動かすことができなかった。
前半のゲームバイスキャプテンとして先発フッカーを務めた清水健伸選手(早稲田大学1年)は言う。
「相手(の姿勢)が高いと、自分も高く行ってしまう傾向がある。あの高さに対するアタック、にみんな経験がなかったのだと思います。」
大学とリーグワンでは、ハイタックルの基準が違うことも影響した。
「相手のディフェンス姿勢が高いまま、なタックルに慣れていません。どうしたらいいんだろう、という迷いがありました。」
もちろん、力負けの側面もある。だが、低い相手に対して低く当たることに慣れている分、数cm・数十cm高く構える相手に対しては、低く当たることができなかった。
「今日それを経験できたことで、良いイメージができました。」
原因がはっきりしている改善点。だから表情は明るかった。
モールでも真ん中を割られるシーンが幾度か起こった。
「体が小さい分、しっかりとまとまって密度を大きくし、大きくて強い、腕の長い選手たちを相手にも勝てるようなモールを作らないといけないと感じました。」
それでも、全体を振り返れば「1ヵ月のFW合宿の成果は出た」と清水選手は断言する。
「FW合宿がない中でいきなり今日の初戦だったら、と考えると、モールの形すらできていないだろうと思います。2月はハードだったのですが、それでも形を作れた、『ギリ戦えた』所まで持ってこれたのかな、って。」
FWの選手たちは、スクラムコーチを務める山村亮氏からアドバイスを受け、スパイクのポイントを長くした。ふだんの練習も、もちろんこの日の試合でも、長いポイントを使用する。
「僕が履いているスパイクは長いポイントが入らないので、実は僕だけ変えていないんです。でも周りに聞いたら『滑らない』と言っていました。ただ重さが出る分、走りにくい所もあるようで。セットプレーに注視する分、影響は出ているのかな、とは思います。」
だが総じて、FW陣としては明るい収穫を得た80分間だった。
「相手のフィジカルは強かった。でもコンタクトの高低差が高いので、自分たちは低さを武器に戦えば全然いけるんじゃないか、という感覚ではありました。高さが出てしまうと、相手の土俵になる。でも自分たちの低さで戦えば、全然問題ない。なんなら自分たちのラグビーになるんじゃないかな、って。」
初陣の相手が日本代表経験者擁する埼玉WKだったからこそ、自分たちの強みを肌身をもって理解した。
世界を見据えて
昨年、飛び級でU20日本代表に選ばれた唯一の選手として、FB矢崎由高選手は試合のレベル感をこう振り返った。
「選手個人個人でみたら、ベン・ガンター選手や布巻峻介選手がいたので、トップレベルは強かったと思います。でもチーム全体の完成度としては、昨年戦ったU20フランス代表の方が強かったかな、と。」
もちろん、自分たち自身がチームとして完成していない。だから一概には言えない、と補足したが、戦う相手への備えはこの試合以上が必要だということを示唆した。
「今日のこの試合が、U20のスタートです。」