2浪に柔道部出身、NZ帰りまで。多様な人材を擁する早稲田が、2年ぶりに新人早明戦を制す|新人早稲田×新人明治

新人早稲田

FWが接点で勝ち、ディフェンスで耐え忍ぶとボールを奪い返す。
特に前半のゴールラインを背負ったディフェンスは圧巻だった。
攻守の切り替えも早く、ターンオーバーしたらあっという間に敵陣へ。そして、ワンチャンスを確実にものにする。
守る、蹴る、捕る、走る、取り切る。
一連の判断と連携で、明治を圧倒した。

センスとハートのスタンドオフ

キックのタイミングに、確実なハイボールキャッチ。
抜群のゲームコントロール力と個のスキルでチームを勝利に導いたのは、10番・島田隼成選手。
ピンチの場面では、どこからかディフェンスに走り込み、相手選手をタッチに押し出した。

身長174㎝ながら跳躍力とコース選択を武器に、なんども競り勝った
福岡県立修猷館高校を卒業したのは、2023年3月。
その後、ニュージーランド・Mt Albert Grammar Schoolへと進み、同年12月末までの1年間をニュージーランドで過ごした。
だが、レベルの高い日本の大学で勉強もラグビーもしたい、と帰国を決意。ワセダを選んだ。
大田尾竜彦監督は「高校生の頃から知っているが、ラグビーセンスがあってハートも強い。リーダーシップもある。自分の意志でニュージーランドに行き、帰ってきて早稲田の門を叩いた。非常に意志が強い所に期待をしています」と話す。
強みはキックを交えてのゲームコントロール。
特に試合序盤、この試合における早稲田の戦い方を示したキック戦術は効果をもたらした。
またこの日のゲームキャプテンを城央祐選手が務めたが、島田選手はバイスキャプテンを担う。
入部してから一貫して取り組んできた『接点で引かないこと、自分たちから間合いを取りに行くディフェンス』に焦点を当て挑んだ、入学後初めての早明戦。
「今日はFWが起点となってボールを奪ってくれて、そこで得たボールをバックスに回して外の良いランナーたちがトライを取ってくれた」とチームメイトを讃えた。
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コリジョンを制した両フランカー

6番・久我真之介選手(早稲田実業出身)に、7番・牧錬太郎選手(桐蔭学園出身)。

全く異なる経歴を歩んできた両フランカーが、コリジョンを制した。

6番・久我選手にとって、『ラグビー部』に入部するのはこれが初めてだ。

小学生の頃は柔道に打ち込んだ。一緒の道場に通っていたのは、現在のチームメイト・田中健想選手(桐蔭学園出身)。

「中学生になったら、一緒にラグビーをやらないか?」と誘いを受け、中学の3年間はワセダクラブ・ラグビースクールでプレーしたが、高校では柔道に戻る。高校3年の12月まで、ふたたび道着を着た。

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柔道部を引退した、昨年12月のこと。

ラグビーを諦めきれなかった久我選手は、早稲田実業ラグビー部の練習に加わった。

大学ではラグビーがしたい、と卒業までの3か月間、下級生に混ざって楕円球を握る。年末の花園では、他の部員とともにスタンドから応援をしたという。


現在つけるヘッドキャップは、早稲田実業のもの。高校卒業時に贈られたもの

やっぱりワセダでラグビーがしたい、と「戻ってきた」久我選手。

大田尾監督からは「スキルを4年間で身に着けていこう」とエールを送られた。

まだまだスキルが足りない分、いまの自分にできることは「接点でブチ当たること」とひたすらにタックルへ入る日々。

この日も幾度となくタックルに顔を出し、体を当てることを恐れない姿をいかんなく見せつけた。


右が久我選手。左は早実ラグビー部キャプテンだった多田陽道選手

「(久我選手からは)3年のブランクを感じない」と話したのは、ワセダクラブ・ラグビースクール時代に4番・5番でコンビを組んでいた龍康之助選手(早大学出身)。

「要所要所で、柔道をやってきたことを感じます。誰よりも体が強く、柔道がラグビーに活かせている」と笑顔を見せる。

久我選手自身も「高校3年間はラグビーしていませんでしたが、ワセクラの仲間がいっぱいいます。絆は深いです」と、ラグビー蹴球部での充実した日々をうかがわせた。

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そんな久我選手の相棒を務めたもう一人のフランカーは、昨季の花園優勝校・桐蔭学園出身の牧選手。

花園では3回戦で先発出場したが、決勝戦での出場機会はなかった。

この日、グラウンド上で最も存在感を放った選手のうちの1人であっただろう。

牧選手は「環境が変わったこと」を成長の一つに挙げた。

「桐蔭学園高校時代、フランカーはあまりボールを持ちませんでした。でもワセダでは、ボールを持ちたい人が持つ。自由に前に出るラグビーをやらせてもらっています」

ボールキャリーはもちろんのこと、ボールを持っていない時の働きぶりも圧巻だったが「それは桐蔭学園で培われたもの」と笑った。


「誰をノミネートするかを意識し、ノミネートミスを減らすこと。タックルの仕方、ボールの持ち方を久我選手と合わせて挑んだ」と準備を語る

背番号7。ハードワークしなければいけないポジションにあって「出場した70分間、ハードワークを徹底できた」と牧選手は話すが、課題は体力だ。

途中で足がつり交替となったため「80分間走る体力をつけたい」と言った。

「自分ができることを決め、その中でどれぐらい良いパフォーマンスが出来るか、を考えています。他人と比べないこと。どこを伸ばしたらチームに貢献できるか、を考えています」


目指すはイングランド代表のサム・アンダーヒル。「タックルに憧れています」

牧選手は言う。

「今年の1年生には、勢いがある」

下のグレードではあるが、1年生対上級生の練習でも、1年生が勝る部分があるのだそうだ。

「1年生たちは自信を持っていますし『上のチームに上がってやるぞ』と気合いが入っています。競争環境がとても厳しいです」

競争を勝ち抜く、その覚悟を結果で示した一戦となった。

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2浪のちワセダ

「ワセダでラグビーがしたい」と、高校卒業後2年間を費やした選手がいる。

15番・植木太一選手。

関東学院六浦高校を2022年3月に卒業すると、2年間の浪人生活を送った。

この日自身が決めた2トライは、いずれもその走力を活かしたもの。

ディフェンスにも体を張り、バックスリーとしての務めを果たした。

2年のブランクがあったとは思えないそのキレは、勉強の合間のジム通いで培う。ウエイトトレーニングを続けながら、勉強に励んだ。

「今日はスピードを活かせたことに満足しています。でも、最後足をつってしまったことは課題。アカクロを着るために毎日トレーニングに励み、下から押し上げられるように頑張りたい」と早稲田での4年間に誓った。

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大田尾竜彦監督コメント

やれることをしっかりやること。戦い続けること。横と繋がり続けること。

この3点を伝えて選手たちを送り出しました。

今日はそれをやってくれたかな、と思います。みんながまとまって、チームとして成り立っていました。

――クールダウンの時に、試合に出場しなかったメンバーたちの練習をずっとそばで見守っていらっしゃいました
勝負ごとなので、勝たなければいけません。メンバー選考をして、今日、自分たちのカテゴリーで出られなかった選手たちに対しての敬意です。

彼らは頑張っているけれども、届かなかった。だから最後に声を掛けるのは、僕たちのやるべきことです。

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