躍動した慶應義塾FBは、宮崎からの一般受験生「ワクワクする選手に」法政第二CTBは「もっとワガママに」成長する|第72回関東高等学校ラグビーフットボール大会 神奈川県予選会・3位決定戦

慶應義塾

新人大会から取り組んだのは、体づくり。そして基礎・基本の徹底。

前週行われた準決勝・桐蔭学園戦では「ある意味完敗。非常に学ばせて頂いたゲームだった」と和田康二監督は振り返る。

だから、この3位決定戦では「桐蔭学園さんにやられたようなテンポと強さを出すために、しっかりとFWが戦うこと」をテーマに掲げた。

敵陣に入るまではバックスがしっかりとエリアマネジメントし、最後は強いFWに託して取り切る。

そのプランを遂行した前半だった。

ボールを持つFW一人ひとりが前に出続けた姿は、さながら慶應義塾體育會蹴球部を彷彿とさせた。

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これで関東大会は、神奈川県3位としてDブロックに入った。

1回戦・熊谷工業高校(埼玉県3位)との戦いに勝利すれば、翌ブロック決勝戦の舞台は熊谷ラグビー場Aグラウンド。

「試合前、選手たちに伝えました。神奈川で3位に入って、関東大会1日目に勝利すれば、2日目はAグラウンド。しかも相手は、日川か早稲田実業の勝者。もし早実が勝ち上がれば、熊谷ラグビー場Aグラウンドで早慶戦ができるんだ、と(和田監督)」

関東大会での早慶戦を叶えるために、まずは大会1日目。

熊谷工業を相手に、スピードで圧倒する。

黒黄への憧れ。親への感謝

両手を真っ直ぐ下におろし、指先まで力を込めたまま、背筋は真っ直ぐ「ありがとうございました、失礼します!」と腰を曲げる。

好青年を絵にかいたような姿でインタビューに応じたのは、金谷悠世(かなや ゆうせい)選手、3年生。

キレのあるランでゲインメーターを稼ぐフルバックだ。

宮崎県出身の金谷選手。

3歳の頃、宮崎ラグビースクールでラグビーを始めると、次第にテレビに映るタイガージャージーに憧れを抱くようになった。

「帝京大学にも立ち向かっていく、泥臭い姿が格好良くて。慶應義塾大学に行きたい、と思いました。だったら高校から慶應に行って、友だちもたくさん作っておこう」と自ら慶應義塾高校の受験を志願。

一般受験で入学し、親元を離れ1人寮生活を送っている。


「そういう(一般受験で入学する)子が活躍しているのが、慶應らしい」と和田監督

とは言うものの、ラグビー部の専用寮があるわけではない。

慶應義塾高校に通う生徒向けの一般学生寮に住み、食事は朝晩の2食が提供される。

加えて両親から届く、月に1度の仕送り品で賄う。

「毎朝『今日もがんばって』とメッセージが届きます。今日は父が宮崎から応援に来てくれました。本当、感謝しかないです」と自身が過ごす環境に謝意を表した。


2つ上の兄は、関西大学ラグビー部に所属する

この日は自身でトライを決めることはなかったが、いくつものビッグゲインを見せ、トライアシスト。

大きなインパクトを残した。

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もちろん、課題は残る。

ゴール前まで行くも、取り切れないシーンが数度。

取り切れる走力を身につけたいし、味方に託せるような判断力も磨きたい。

「コンタクトで通用しない所、いらないミスをしてしまう所。もっと成長して、(高校日本代表候補でもあるSO小林)祐貴についていけるようになりたい」と目を輝かせる。

そして最終的には「ボールを持った時にワクワク感のある選手に」と願う。

「こいつにボールを渡しておけば、と仲間に思ってもらえるような選手になりたいです」

見ている者へのワクワクだけでなく、ともにグラウンドに立つ仲間からの信頼を大切にしたいのだ、と言った。

全ては、若干15歳にして選んだ、タイガージャージーへの道を進むため。

「高校生活はめっちゃ楽しいです。ほぼラグビーしかしていませんが、とても充実した時間を過ごせています」

あくなき挑戦心が、成長スピードを加速させる。

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高校日本代表候補ゆえの焦り

チームで唯一、高校日本代表候補に選出されたのは10番・小林祐貴選手。

「今年のサニックスワールドユースを見たら、高校日本代表候補に選ばれている他のスタンドオフの選手たちが活躍していた。焦りました」

選ばれたからこそ「もっと頑張らないと」と気持ちを新たに、今大会へと挑んだ。

1月に行われた新人大会以降は、キックを含めたエリアマネジメントに周りを活かすプレーなど、『ゲームコントロール力』を意識し練習に取り組んでいる。

この日行われた3位決定戦では、落ち着いてFWを当てるタイミングと、テンポアップするタイミングと。パスを放る場面に、キックを蹴り込む場面まで。

「注力している」と話すゲームコントロール力を、1レベル上げた60分間を見せつけた。

だが、高校日本代表にたどり着くためには、ここで満足してはいられない。

慶應義塾では大学生とのユニット練習もしばしば行われるが、圧倒的なハンドリングスキルの差を痛感する。

「全然違います。大学生の練習に入れてもらう度に、状況判断含めたハンドリングスキルをもっと磨かないといけないと感じる」と、自身に長期的な課題を課している。

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花園の切符を掴み獲るため。

高校日本代表入りを果たすため。

そして、大学以降も成長を続けるため。

筋肉量を増したその体つきに、小林選手の覚悟は表れた。

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