昌平
昌平史上初となる埼玉4冠に向け「最も警戒していた(御代田誠部長)」という7人制のタイトル。
確実に手中に収めるべく、強力な助っ人を招集した。
フィリピン代表ヘッドコーチ、U18オーストラリア7人制代表ヘッドコーチなどを歴任した、Expo Mejia(エキスポ・メヒア)氏。
10年ほど前から複数回にわたって同校をコーチングしており、今年は初めて、7人制に特化した練習を2週間みっちり行った。
メヒア氏は、相手とのギャップを見つける、その方法とそこへ攻撃する判断力を教え込んだ。
白鳥蓮キャプテンは「これまでと戦術が変わり、自分たちに合ったプレーができるようになりました。試合を重ねるごとに自信にもなったし、成長した」と笑顔を見せる。
「こうしたら簡単にトライ取れるよね、というやり方を教えてもらいました」
船戸彰監督も「選手たちが疲れていない。今までは無駄に走っていたのかもしれない、ということに気付かされた」と、新たなセブンズスタイルが確立したことを明かした。
また先日行われた関東大会でAブロックで2試合を戦った経験とフィジカルが、チームに余裕を与えた。
予選トーナメントを完封勝ちで勝ち上がると、迎えた決勝トーナメント準々決勝。
ランナー揃う本庄第一を相手に、34-5と圧倒。
準決勝では慶應志木を2トライに抑え35-12と勝利し、決勝戦では31-19。
全ての試合で30点以上を獲得できるスコア力を蓄えた。
「セブンズにおいて、ディフェンスはとても大事になります。タックルもディフェンスもセブンズ仕様にするため、聞く耳を持って、プレースタイルを変えてくれた。なによりどうやってセブンズを戦うべきか、ということを学んでくれました」
メヒア氏も充実の表情を見せた。
白鳥キャプテンは、来る全国大会に向け誓う。
「1年生の時に出場した全国セブンズでは、なにもできなかった。多くの方が観に訪れる全国で『埼玉は昌平だぞ』という所をしっかりとプレーに表したい」
メヒア氏も「このままディフェンスを強化して欲しい。正しい判断をするためのフィットネスも身に着けること。頑張って!」とエールを送った。
深谷
ここ数年、全国の舞台から遠のいている深谷高校。
現在の深谷高校生にとって、入学して初めて、全国大会が懸かった決勝戦を迎えた。
「ずっとチャンスを逃してきた。『ここしかないな』と思って。嬉しかったし、ワクワクした気持ちでした」
セブンズチームのキャプテンを務めた大屋玲穏選手は、試合後、晴れやかな表情を見せた。
試合開始早々、昌平に連続トライを許した。
試合時間が14分間しかないゆえ、流れを掴むことが結果に直結するセブンズラグビー。
大きくスコアを離されると、仲間を集め言葉を掛けた。
「泣いても笑っても、これが今日最後の試合。楽しもう」
仲間の、そして自らの気持ちを切り替えた。
セブンズメンバーでなかったFWの選手たちは、手作りの応援ボードで盛り上げる。
「東福岡の応援を真似しました」と笑ったのは、15人制のチームキャプテンを務める新井靖憲選手。
プロップの橋本皓輝選手選手とともに選手を形容する言葉を考え、女子マネージャーが文字をしたためた。
秘密裏に進められた、一大プロジェクト。
決勝トーナメントの朝、全員が集合したミーティングで初めてお披露目すると、試合メンバーに笑顔が溢れた。
「緊張が解けて、準々決勝で川越東に競り勝てた(17-12)きっかけを作れたかな」と新井選手は振り返る。
15人制では、スタンドオフとしてゲームメイクを担う大屋選手。
「7人制でキャプテンをやらせてもらいました。決勝戦まで勝ち進む経験もできたので、15人制にもこの雰囲気を活かしたいです」
初のファイナルを、必ずや飛躍のターニングポイントへ。