長野県上田市菅平高原・アンダーアーマー菅平サニアパークにて行われた、第11回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
福岡県代表・東福岡高校は、予選第3位グループで構成されるボウルトーナメントで3位に終わった。
苦しい予選組みだった。
終わってみれば、カップトーナメント優勝はHプール1位の桐蔭学園。
プレートトーナメント1位も、Hプールで2位だった京都工学院。
振り返れば、まさに『死の組』だった。
下級生の突き上げ
「結果が全て。選んだ僕の責任です」
全ての試合を終えると、東福岡のセブンズチームを率いる稗田新監督は、そう言葉を紡いだ。
大会1日目の第1戦目が、のちに優勝校となる桐蔭学園戦。
後半4分まではリードしていたものの、ラスト3分で2トライを喫し逆転負け。
続く京都工学院戦では悪い流れを立て直すことができぬまま、1トライが遠い完封負けだった。
大会2日目。
予選リーグ最下位のチームで構成されるボウルトーナメントに進んだ東福岡は、かつてない試みに出た。
先発に並んだのは、1・2年生の名前だけ。
「わざと(メンバリングをそう)しました」と、稗田セブンズチーム監督は言う。
「初日がああいう結果で、『これ以上弱い東福岡を見せるわけにはいかない』と。ということは、来年同じような結果を出すわけにはいかないので、3年生を出さずに1・2年生に経験値を与える。『1・2年生で戦って、勝って、結果出して帰ってこい』と言って送り出したら、結果出して帰ってきました」
下級生の突き上げを狙った。
迎えた、大会3日目。
ボウルトーナメント準決勝の相手は、セブンズでの全国優勝経験を有する流経大柏。
「今日は最終日だから、もう一回3年生も入れてみんなで戦おうか、と」3年生を先発に復帰させるオーダーに変更した。
だが「この結果」。
21-26。
ボウルトーナメント決勝にたどり着くことなく、菅平を下りた。
試合の流れは、決して悪いものではなかった。
先制トライを決めたのは東福岡。
逆転され前半を7-14とビハインドで折り返したが、2連続トライで勢いに乗り21-14と再びポイントリーダーの座についた。
後半5分までは保ったリード。
ダメ押しとなる追加トライまであとわずか、と迫る攻撃も見せた。
だが、ラインアウトでのミスから流れは変わり、ラスト2分で許した逆転の2トライ。
ミスが苦しい、今シーズンを表すような終わり方だった。
要所でミスが出た、この敗戦を受け、稗田セブンズチーム監督は「これから、また1・2年生に(メンバーが)代わっていくのかな」と言った。
入学間もなく、15人制でスタンドオフデビューを飾った1年生・川添丈選手は、今大会でもルーズボールに真っ先に反応し、脇目を振らず飛び込んだ。
最終戦で一時逆転となる2連続トライを決めたのは、こちらも1年生のスタンドオフ・橋場璃音選手。1対1の場面で裏にボールを蹴り上げ、インゴールで追いつき自らの個人技でトライを重ねた。
「もう、上級生に経験値を与えている場合じゃない。次を考えないと、と思って(稗田セブンズチーム監督)」
厳しい言葉が並ぶ、その背景には「これ以上弱い東福岡を見せるわけにはいかない」の想いが渦巻く。
一方で「3年生に力がないわけではない」とも慮る。
だからこそ、この夏に。
3年生の奮起を待ち望みたい。
1年生の『責任と覚悟』
大会最終日、グラウンド上で最も存在感を示したのは、1年生の橋場璃音選手。
15人制でも福岡県予選で公式戦出場経験を持つルーキーだ。
群馬県出身の橋場選手。
東福岡への進学を目指したのは、小学2年生の頃だった。
当時、箸本龍雅選手(現・東京サントリーサンゴリアス)がキャプテンを務めていた東福岡が花園で優勝した姿を見て、憧れを抱く。
TV越しにも伝わってきた、東福岡の『覚悟』に惹かれた。
「部員150人を代表する選手たちが、選ばれていない他の部員の分まで体を張ってディフェンスする姿。アタックでは、グラウンドいっぱいに走り回る姿が格好良かった」
親元を離れ、福岡でチャレンジする決断は難しいものではなかった。
早くも高校1年の夏、憧れの東福岡のジャージーを全国大会で手にした。
「福岡に残っている、選ばれなかった2・3年生の分もと思って。自分がこのジャージーを着るからには、1年生とか関係ありません。東福岡の代表として、責任と覚悟を持って戦おう、とグラウンドに立ちました」
学校のグラウンドでキック練習をしていた時には、3年生たちから「リオ、セブンズ頑張れよ」と声を掛けられましたと嬉しそうに話した。
「次は花園メンバーに入れるように、もっともっと頑張りたい」
小さい頃から、ずっと憧れていた東福岡のジャージー。
「1年生から着られることは光栄です。その期待に応えられるように、頑張りたいと思います」
そのジャージーは、早くも『憧れ』から『責任と覚悟』に変わった。