戦、完。「優勝して、すげー選手と一緒にラグビーしていたと思って欲しかった」恩返しの準優勝|第78回 国民スポーツ大会「SAGA2024」ラグビーフットボール競技 決勝

みんなの準優勝

「毎回、一番体を張った。人格者です」

戸田監督が称える齋藤源輝キャプテン(東京、No.8)は、しかし表情を歪め答えた。

「自分たちの反則で負けてしまった。悔しいです」

十二分に戦えた前半。

ラインアウトでもスクラムでも、引けを取らなかった。

「やろうとしたことが徹底できて、あの点差。だから後半もそれを続けようと思ったのですが、自分たちが後手に回ってしまいました。自分たちのペースに戻せなかったことが敗因かなと思います」

単独チームとして挑んだ奈良県を相手に、最後はスコアを引き離された。

国スポを通じて学んだことがある。

他の選手たちのラグビーへの向き合い方、だ。

技術的な面だけでなく、取り組む姿勢にも学ぶことがあったという。

「チームに帰って、この学びを還元したいです」

そして、今年のオール東京を作り上げた全ての人たちに伝えたい。

「50人で戦って、この結果。準優勝は、自分たちだけで手にしたものではありません。みんなの準優勝、ということを伝えたいと思います」

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高校最後の公式戦。「優勝して、すげー選手と一緒にラグビーしていたと思って欲しかった」

3戦すべてで先発出場したのは、早稲田学院高校3年の小林商太郎選手。

早稲田学院は第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 東京都大会・1回戦で敗退しており、所属するチームでの高校ラグビー生活は既に終わりを迎えていた。

だからこの国スポ決勝戦が、高校最後の公式戦だった。

足首の怪我により、都大会1回戦では最後の数分間しか出場できなかった小林選手。

「選手のほとんどが高校からラグビーをはじめるチーム。なんとなく始めたラグビーを、なんとなく終わらせてしまった責任感がありました」

だから、考えた。

どうやったら、学校の仲間たちに恩返しをできるだろうか。

「もし国スポで東京都が優勝したら、『俺はすげー選手と一緒にラグビーしていたんだ』とみんなに思ってもらえる。そういう形で恩返しをしたいと思いました」

仲間のためにもと願った優勝。しかし頂点には届かなかった。

「情けないです」

早稲田実業2年・岩崎壮志選手とともに、試合後は目を真っ赤に腫らした。


決勝戦で東京都が奪った唯一のトライは、ラインアウトからのサインプレー。小林選手も大きな役目を果たした

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大会期間中、高校のチームメイトからはたくさんの連絡が届いた。

「頑張って」

「配信見るからね」

伝えてくれた、仲間の言葉が嬉しかった。

3年間を共にした、友への恩返し。高校でラグビーを始めてくれた、仲間への恩返し。

国スポで叶えられなかった日本一は、来年以降へ持ち越しとなる。

「早稲田大学で優勝します。だから僕が大学で優勝したら、友だちに俺のことを自慢してくれ、とみんなに伝えたいです」

父は、早稲田学院から早稲田大学へと進んだ小林商司氏。

右プロップとして早明戦や早慶戦への出場経験を有するが、大学選手権での優勝経験はない。

「父を超えます」

次なるステージで、友への誓いを叶える。

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