みんなの準優勝
「毎回、一番体を張った。人格者です」
戸田監督が称える齋藤源輝キャプテン(東京、No.8)は、しかし表情を歪め答えた。
「自分たちの反則で負けてしまった。悔しいです」
十二分に戦えた前半。
ラインアウトでもスクラムでも、引けを取らなかった。
「やろうとしたことが徹底できて、あの点差。だから後半もそれを続けようと思ったのですが、自分たちが後手に回ってしまいました。自分たちのペースに戻せなかったことが敗因かなと思います」
単独チームとして挑んだ奈良県を相手に、最後はスコアを引き離された。
国スポを通じて学んだことがある。
他の選手たちのラグビーへの向き合い方、だ。
技術的な面だけでなく、取り組む姿勢にも学ぶことがあったという。
「チームに帰って、この学びを還元したいです」
そして、今年のオール東京を作り上げた全ての人たちに伝えたい。
「50人で戦って、この結果。準優勝は、自分たちだけで手にしたものではありません。みんなの準優勝、ということを伝えたいと思います」
高校最後の公式戦。「優勝して、すげー選手と一緒にラグビーしていたと思って欲しかった」
3戦すべてで先発出場したのは、早稲田学院高校3年の小林商太郎選手。
早稲田学院は第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 東京都大会・1回戦で敗退しており、所属するチームでの高校ラグビー生活は既に終わりを迎えていた。
だからこの国スポ決勝戦が、高校最後の公式戦だった。
足首の怪我により、都大会1回戦では最後の数分間しか出場できなかった小林選手。
「選手のほとんどが高校からラグビーをはじめるチーム。なんとなく始めたラグビーを、なんとなく終わらせてしまった責任感がありました」
だから、考えた。
どうやったら、学校の仲間たちに恩返しをできるだろうか。
「もし国スポで東京都が優勝したら、『俺はすげー選手と一緒にラグビーしていたんだ』とみんなに思ってもらえる。そういう形で恩返しをしたいと思いました」
仲間のためにもと願った優勝。しかし頂点には届かなかった。
「情けないです」
早稲田実業2年・岩崎壮志選手とともに、試合後は目を真っ赤に腫らした。
決勝戦で東京都が奪った唯一のトライは、ラインアウトからのサインプレー。小林選手も大きな役目を果たした
大会期間中、高校のチームメイトからはたくさんの連絡が届いた。
「頑張って」
「配信見るからね」
伝えてくれた、仲間の言葉が嬉しかった。
3年間を共にした、友への恩返し。高校でラグビーを始めてくれた、仲間への恩返し。
国スポで叶えられなかった日本一は、来年以降へ持ち越しとなる。
「早稲田大学で優勝します。だから僕が大学で優勝したら、友だちに俺のことを自慢してくれ、とみんなに伝えたいです」
父は、早稲田学院から早稲田大学へと進んだ小林商司氏。
右プロップとして早明戦や早慶戦への出場経験を有するが、大学選手権での優勝経験はない。
「父を超えます」
次なるステージで、友への誓いを叶える。