法政二 35-24 関東学院六浦
法政二
3点のリードを許し、迎えたハーフタイム。
原礁吾監督は、あえて選手たちに声を掛けなかった。
「後半やるべきことを生徒たち自身で話し合えていた」と、その理由を話す。
グラウンドに立つ選手たち自身にも、焦りはなかった。
「前半向かい風だった割には上出来かな、と落ち着いて後半にやることを確認することができました」と話すは、石山潤キャプテン。
「途中で上手くいかない場面はありましたが、ゲームプランをやり切ることができたかなと思います」
チームに大きな変化が訪れたのは、夏合宿終わりのことだった。
エナジーの少なさが、チームの課題として挙がった。
「淡々とプレーする感じの子が多かったんです。だから『自分たちがラグビーをしていて楽しいと感じるのはどういう時か』ということを、3年生だけでミーティングしました」(原監督)
そこで新たに『エナジー班』を設けることに。
日頃からパッション溢れる選手をリーダーに据え、「感情を出していこうぜ」と空気を作れば、あっという間にグラウンド上で選手たちの雄叫びが聞こえるようになった。
石山キャプテンは言う。
「感情を出すことで、自分たちの雰囲気を作り上げて、自分たちの流れに飲み込むことを意識しています」
次戦の相手は桐蔭学園。
最も雰囲気に左右されないチームではあるが、だからこそ自分たちのために自分たちで作り上げる空気を大切にしたい。
「完璧にチャレンジャー。勇気をもってやるしかない」(原監督)
「すごくタフな試合になると思うが、自分たちにできる最高の準備を1週間全うしたい」(石山キャプテン)
中4日の戦いへと向かった。
関東学院六浦
LO成田虹東キャプテンは言った。
「昨年の花園予選で、同じ相手に負けました。最後に逆転されて、今日と同じような形で敗れました。そのまま僕たちが先輩の代から受け継いで。だから今年こそは、とこの日のためにピークを持ってきました」
やることはやった。
プランも練った。
試合を6分割し、前後半それぞれの最初の10分と後半の10分、計40分間で必ずトライを取ろうと集中力を高めた。
結果、前後半ともに最初の10分間ではトライならずだったが、最後の10分間には2トライ1ペナルティゴールを沈めた。
横浜ラグビースクールでラグビーを始めた成田キャプテン。当初は小学生でラグビーを終える予定だった。
だが気付けば、高校3年の秋をキャプテンとして迎える。
「やってみると、やっぱりいいスポーツ。15人で戦って、1つの目標に向かって戦うことができる、ラグビーの良さがありました」
知らぬ間に、ラグビーに魅了されていた。
試合前には、ジャージーがもらえなかった3年生たちが、戦いに挑む選手に向け、気持ちを伝える時間が設けられた。
松葉杖を両脇に挟んだ3年生は、涙を零しながら円陣の真ん中で言葉を紡ぐ。
林広大監督は言う。
「試合に出られない子の気持ちは大事だと思っています。なので、その気持ちを言わせてあげる場を作ってあげたかった」
そんな仲間の気持ちに奮起したのは、7番・沢辺袮亜バイスキャプテン。
「中学生の頃からずっと一緒にやってきた選手もいました。今日、一緒に出られなかったことが悔しいです。でもだからこそ、その子たちの分までタックルをして絶対に勝ってやろうと気持ちがたかぶりました」
試合終盤には、敵陣深くで何度もボールを連続して受け取り、ひたすらに体を当てた沢辺選手。
「自分が行くしかないと思って」
仲間の気持ちをのせたプレーを見せた。
春、留学先のNZで肩を脱臼し4か月間グラウンドから離れた。中学から6年間を関東学院六浦で過ごし「僕の武器は声とタックルしかない。声で存在感を示しました」