東海大相模 95-7 湘南工大付
東海大相模
国スポでの戦いから1ヵ月。
オール神奈川としての経験を積んだSO長濱堅バイスキャプテンは、チームの変化をこう語る。
「桐蔭学園さんはミスに厳しかった。相模に帰ってから、ミス一つひとつに厳しくこだわることが増えました」
FWがミスをすればBKが注意し、BKがミスをすればFWが声を上げる。
「双方が高め合える雰囲気ができてきた」という。
一方、決勝戦・11月17日に向け「ピリピリしている」とも口にする。
「3年生がミスに厳しくなった分、ピリピリしてきた。でも今日は、試合前のウォーミングアップでちょっとフワっとしてしまったんです。だから僕がみんなを集めて、キャプテンが声を掛けました」
HO矢澤翼キャプテンがチームに伝えた言葉はシンプルだった。
『圧倒するぞ。1点もやらない。体当てろ』
チームの強みは、体を当てられること。FW力を強みとする今年のチームだからこそ、この日のウォーミングアップで驕りが垣間見えたのだと矢澤キャプテンは説明した。
「どんな相手に対しても、良い準備をしなきゃいけない。でもどこか心の中の余裕が見えた瞬間がありました。早急に取り組まないといけないといけません」
勝負の11月に入った。いま、矢澤キャプテンが思い出すのは、2年前の練習だ。
「2年前、勝った時の練習ってどうやっていたんだろう、って。その時の雰囲気はいまの3年生しか知らないので、3年生は後輩たちに伝えられるようにしたいし、下級生は知ろうとしなきゃいけない」と語気を強める。
当時、部内でのアタック・ディフェンス練習を「手が震えながらやっていた」という矢澤キャプテン。
「ミスしちゃいけない、ミスしちゃいけない、と思いながらプレーしていました。それで手も震えた。でも今は、それがないんです。(長濱)堅もそう言っていました。まだ練習で甘い点があります」
良く言えば、3年生には楽観主義者が揃う。
笑顔が溢れ、仲良くて元気。
だからこそグラウンドに入るときにはスイッチをオンにする、その空気づくりに取り組みたいと言った。
「桐蔭学園さんとの試合前1週間だけ、スイッチオンしても結果はついてこない。今すぐ改善しなければ」と目を光らせる。
2年前、勝って喜び、涙を流した光景を思い出すこともあれば、昨年得点差をつけられ敗れたことも鮮明に覚えている。
11月の、忘れられぬ2つの光景。
「勝つために何をしなきゃいけないか、ということは、2年前の先輩たちが見せてくれました。それでも全国に出て足りなかった、という事実も残ります。2年前を超える練習、環境、積み重ねをしなきゃいけない。自分たちが自信を持っている点で桐蔭学園だって勝負してくるし、絶対に一歩も引かない勝負をする必要がある。そのためにも準決勝の慶應義塾戦では『自分たちのやりたいことではなく、やるべきことを徹底する時間』にしたいです」
まずは中4日の慶應義塾戦で東海大相模のラグビーを徹底すること。
その先に、運命の11月17日を迎える。
湘南工大付
オール神奈川にも選ばれていた岸野暖士キャプテンを骨折で欠き、バイスキャプテンの12番・小野晃瑠選手がゲームキャプテンを務めた湘南工大付。
「練習からチームをまとめ、トライ後には良い声をかけたい」と意気込み、小野選手はピッチに立った。
最大の見どころは、後半5分。
右サイドで溜めたパスを受け取った9番・鷺坂隼希選手が勢いよく走り抜けば、ファーストトライが生まれる。
狙っていたバックスでのトライに、みなが駆け寄り喜びを表した。
もちろん、トライは取られた。前後半あわせて15本。
何本トライを取られようとも、被トライ後のハドルでは選手たちから何度も「楽しもう」と声が飛んだ。
「3年間プレーしてきましたが、スポーツの根本は楽しんでこそ、だと思っています」
小野選手は、意図を説明した。
この日小野選手が履いたラグビーパンツは、人一倍色が薄くなったものだった。
色が抜けるまで、練習に励んだ3年間。
だが、正直に言えば「やり切れなかった部分もある。悔しかった」
後悔を口にする。
それでも取りたかった形でトライがとれたこと。
先輩たちに恵まれ、楽しい後輩たちにも囲まれ、充実した3年間を過ごせたことに誇りを持つ。
後輩たちには「試合でやり切って、出し切って、高校ラグビー生活を終えて欲しい」とアドバイスを送った。