神奈川王者は桐蔭学園に。「自分たちはどういうチームになりたいのか」3年生が団結した、ある一つのミーティング|第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会神奈川県予選会

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「自分たちはどういうチームになりたいのか」3年生が団結した、ある一つのミーティング

試合後、選手たちは口々に言った。

「この決勝戦に向かって、3年生が団結できたことがすごく大きかった」と。

ぶつかった。

本音を話し合った。

自分たちは、どういうチームになりたいのか。

自分たちは、11月17日をどう迎えるのか。

3年生たちが腹を割って話した、ある一つのミーティングがある。

10月上旬のこと。

何人かの3年生が、練習終わりの部室に残った。

「色々あって、ぶつかったんです。『このままで勝てるのか』と、一瞬嫌な雰囲気になったことがありました」(申キャプテン)

新里選手も続ける。

「右の太もも裏を負傷しチームから離れた期間、今までコミュニケーションを取っていなかったメンバーと話をしようと、セカンドチームのメンバーらと積極的に関わりを持ったんです。自分の経験や、プレーを教えていました」

すると、今まで聞けなかった本音を耳にする。

「(下のグレードの選手たちが)チームから少し離れている印象があると、いままで口にしていなかった思いを教えてくれたんです」

だから、話し合いの場を設けた。

どう思っていて、何がしたいのか。

このままで勝てるのか。

花園でふたたび大阪桐蔭と対戦した時に「また〇〇ができていなかった」と言い訳ばかりが並ぶのではないか。

スターティングメンバーに名を連ねる主力選手たちが本音をぶつけ合えば、自分たち自身で信じ切れていなかった思いが溢れ出た。

「しっかりと腹を割って話すことができました」

しっかりと、に語気を強めた申キャプテン。

「すごくぶつかりました。でも、勝ちたいという思いは合致したんです」

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それから、日頃のトレーニングを見直した。

ウエイトトレーニングも、コンタクトレベルも。

「昨年と比べたら、基準が低くなっていました。そこを全員でもう一回上げたかった」(新里選手)

チームを引っ張る選手たちが「強度を上げよう」と自ら声を掛け始めれば、雰囲気は上向く。

「本当に団結できました。プレイヤーだけでなく、スタンドの応援を含め全員で『勝ちに行くんだ』という意識が持てるようになったと感じます」

チームの主将として、申キャプテンは喜んだ。

だから、繋がった残りの40日間。

59期はどういう形で卒業したくて、どういうラグビーがしたいのか、をもう一度。

花園に向けてもう一度、積み上げるだけ。

2つのスパイク、それぞれの想い

鮮やかな水色のスパイクがトレードマークは新里選手。

1期上の牧錬太郎選手(現・早稲田大学1年)からプレゼントされたものを、今季は多く身につけた。

だが折に触れ、少し色味の薄いスパイクを履くことも。この日の足もとには、その薄水色のスパイクが並んだ。

「自分の中では、絶対に落とせない1戦でした。だから、昨年の花園決勝で履いたスパイクを履こう、って」

そう、このスパイクは、昨季日本一に輝いた時に履いた一足だった。

だが今季は、このスパイクで良い思い出を作れなかった。

関東新人大会でも、選抜大会でも。

優勝は果たせず、靴棚にしまいこんだ。

それでも勝負の一戦を前に、意を決して、昨季の花園優勝スパイクを選ぶ。

「全力でこの試合に挑みたかった。万が一負けた時に、自分の中で絶対に悔いが残らないように。自分の中で『あれをしとけばよかった』という緩いところをなくした状態で挑みたかったんです」

小さい頃、ラグビースクールで教わった『身の回りの整理』を思い出せば、心と体、そして道具を整理した。

靴を洗い、剝れかけたところを直した。ポイントも新しくした。

相棒の勝負スパイク。

ともに、花園の地へと戻る。

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中学2年生の頃から「スパイクはピンク色」を貫いてきたのは申キャプテン。

しかしこの日の足もとは、白色だった。

右フランカーを務める申キャプテンは、スクラムで3番の右臀部を押すことが役割。

しかしこの日の右プロップは、今季公式戦で先発を務め続けてきた喜瑛人選手が直前に負傷したことにともない、急遽、1番を本職とする石原遼選手が3番を務めることになった。

相手は、FWが強みの東海大相模。スクラムで押されたら、勝負に負ける。

「これはもう、ピンクにこだわっている場合じゃない」と、スパイクを新調することにした申キャプテン。

決勝週のある日、小脇にスパイクケースを抱え教室に入ると、石原選手に伝えた。

「おまえのスクラムが心配だから、ピンに変えてきた」

ピンク色のスパイクは、ポイントがプラスチック。だがスクラムで踏ん張りの利く金属がミックスされたスパイクで、挑んだ決勝戦。

結果としては「ふつうに(スクラムを)押されました」と笑ったが、しかし「もしスパイクを変えていなかったら、ペナルティ取られていたと思う」と振り返る。

こだわりを捨て、チームのために。

スパイクに、想いを込めた。

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ピッチサイドから声を送り続けた、プレイングマネージャー

FL小川健輔選手。

今季はマネージャーを兼任するが、準決勝を目前に控えた木曜日の練習中、左ひざを負傷した。

「ほんと、事故でした」と語る。

神奈川県大会の決勝戦で、プレーできないことが決まった。

だから、いまの自分にできることを。

リハビリへと通う道中、東海大相模のこれまでの試合を4試合ほど見返し、個人のタックル成功率をデータとして算出した。

「エリアごとのタックル成功率を、個人個人で出しました。このエリアだとこの人はタックル成功率が高い低い、というデータです」

プレーはできない。

だけど、プレーする選手のためになることはできる。

分析で、仲間の背中を後押ししたい。

「決勝戦は、託すことしかできませんでした。みんなが良い環境で戦えるために、グラウンド外でできることをやりました」

この日は、試合前のウォーミングアップで誰よりも大きな声を出し、仲間を鼓舞。

試合中も、ピッチサイドから届ける声のボリュームを下げることはなかった。

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好敵手・東海大相模へ。桐蔭学園主将・申驥世からのメッセージ

僕が3年連続、神奈川の決勝で戦った相手が東海大相模さんでした。

本当に毎回良いラグビーをしてきて、簡単なゲームは一つもなくて。本当に良いチームだな、と思います。

そういう相模の存在があるからこそ、県予選に向けて自分たちはもう一回、レベルアップできたという事実もあります。

今日、良い試合をしてくれてありがとう。本当に良いチームでした。

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