関東大学ラグビー リーグ戦1部/2部入替戦が12月15日(日)、熊谷ラグビー場で行われ、1部8位の関東学院大学が2部1位の中央大学を49-38で下し勝利。みごと1部残留を決めた。
試合概要
関東大学ラグビー 入替戦
【対戦カード】
関東学院大学(1部8位) 49-38 中央大学(2部1位)
【日時】
2024年12月15日(日)14:00キックオフ
【場所】
熊谷スポーツ文化公園ラグビー場
関東学院大学
圧倒的なリーダーシップを有する2人の共同キャプテンが牽引した、今年の関東学院大学だった。
「僕がモメンタムを作らなければ」と気を吐いたのは、6番・内川朝陽 共同キャプテン。
後半22分。28-24と逆転をした直後の敵陣相手ボールラインアウトを、スティールした。
するとそのままラインブレイク。オープンサイドにボールを繋げ、キックパスから11番・山川誠人選手のトライへと繋げた。
まさしく勢いを生みだした一連のプレーに、内川キャプテンは言う。
「結果的にスティールできたのは僕ですが、僕だけの力じゃない。リフトのみんなのコールであったり、どこがジャンプするか伝えてくれた外からの声だったり。しっかりとリフトしてもらったのも、僕だけの力じゃありません。その分、僕がしっかり前に出てモメンタムを作らなきゃな、と思って。ああいうプレーができたのだと思います」
この日、内川キャプテンは観客席の方を向いて何度も大きく手を振り上げた。
「もっと声援を」と言わんばかりのその姿に、客席も呼応する。
「この1年間、なかなかチームがまとまりきらないところがありました。Aチームだけ、レギュラメンバーだけが試合をしていて、他のメンバーは『カントーのA』じゃなくて『Aがやってる、ただそれだけ』っていう雰囲気がすごく強くて。入替戦の後半は、絶対タイトな展開になると思ったので。その時にどうやってみんなを巻き込もうか、と考え観客席を煽りました。観客数を見てもカントーの方が多かったし、それを武器にするためには僕が煽って一体感を生み出したかった。部員146人と、観客の皆さんと、僕ら15人・リザーブのみんなで戦う、それを体現したかったんです」(内川キャプテン)
「試合に出られない4年生たちの思いも背負っていたと考えると、いつもと違うパワーが生まれた」
大学2年時には、命さえ危ぶまれたほどの大病を患った内川キャプテン。
だが大学4年生の最終戦、自らの足でグラウンドに立ち、関東学院大学のキャプテンとしての80分間を全うした。
試合終盤は鬼気迫るタックルをいくつも繰り出し、学生ラグビーを締め括った。
「怪我をしてしまった、と後悔しながら生きていくのもありかな、と思ったんです。だけどやっぱり僕は、この怪我のおかげで今の自分があると思いたい。怪我があったからこそ、今の自分があります」
怪我に悩む全ての大学生たちへ贈る、珠玉のことばをのこした。
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もう一人の共同キャプテンは、 7番・由比藤聖選手。ゆいとう ひじり、と読む。
3年生の頃から、ゲームキャプテンを務めた経験を持つ由比藤キャプテン。
それほどに、仲間から信頼を寄せられる人。
プレーに裏付けしたい努力を重ねられる選手だ。
「自慢じゃないけど」との断りをいれて、由比藤キャプテンは言葉を紡いだ。
「自分はプレー、背中で見せるタイプでした。1年生の頃から練習時間外も、オフの日だってグラウンドに行って、トレーニングをして。そうやって信頼を勝ち取って、3年生の頃からゲームキャプテンをさせていただきました。内川が怪我でいなかったので、同じポジションな分、自分が頑張らなきゃという思いも強かったです」
2年間のゲームキャプテン生活は、誰にでも務まるものではない。
だからこそラグビーに、そして関東学院大学に、大きな愛情を持つ。
「チームスポーツは、自分がどれだけ頑張っても勝てるスポーツじゃない。いかに周りに影響を与えられるか、とずっと考えながらラグビーをしていました。カントーに何を残せたかと言われたら正直難しいですが、自分のように練習時間外でラグビーのために本気で時間を費やせる人間がどんどんどんどん増えていったら、関東学院もいつか絶対復活できると思っています」
インフルエンサー・由比藤聖。
間違いなく、新生・関東学院大学の礎を築いた。
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2人の共同キャプテン・内川朝陽選手と由比藤聖選手が繋いだ、関東学院大学の1ページ。
誰よりもラグビーに向き合った、2人のフランカー。
素足が見えないほどに巻かれたテーピングが、彼らの4年間を物語った。
ボールをもらうこと。
この日、チーム最多タイとなる2トライ。加えて2ゴールの活躍をみせたのは、1年生フルバックの星遥大選手。
試合終了後には、同じく1年生の相手フルバックのもとに自ら歩を進め、健闘を讃え合った。
人柄を表すワンシーンは、後半25分過ぎ。
キックチャージに走り込んだ中央大学の選手同士が交錯し、グラウンドに倒れ込んだ時のことだった。
真っ先に駆け付けたのが、関東学院のSO安藤悠樹選手と星選手。2人で駆け寄ると、当たり前のように手を貸した。
「2人とも頭から落ちていたので、危ないなと思った。僕も今年の夏、顔面を骨折する怪我をしました。それもあって、頭は危ないという辛さが分かっていたので」(星選手)
榎本監督代行も言う。
「相手があっての試合。レフリーもそうですし、相手選手に敬意を払うこと、リスペクトしているということに尽きます」
学生たちの行動に、目を細めた。
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骨折の影響もあり、星選手は10月頭までチームを離れた。
第6節・大東文化大学戦で復帰すると、1年生ながら15番を担い続ける。
「春はウイングだったのですが、ボールタッチの少なさに悩んだことがありました。どうやってボールをもらいにいけばいいか、と自分で考え、良いコーチングを受け、ラグビーIQが上がったなと自分自身で感じています」
ボールをキャッチすること、パスすること。
ラグビーの根本を一から教えてもらった1年間だった、と感謝した。
「小柄なので、ボールタッチが多くないとチームに貢献できません。来年は10番にもチャレンジしてみたいです」
来年も、1部の舞台でのチャレンジが待っている。
試合後コメント
榎本淳平 監督代行
しっかりと3週間準備してきたものが、全て出たんじゃないかなと思います。特に両キャプテンが中心となってチームをよくまとめ、モチベーション、精神的な部分もしっかりと準備をして臨んだ試合だったと感じました。
春からいろいろと上手くいかないことが多かったのですが、最後の最後3週間前の立正大学戦で初めて勝つことができて、そこから少しずつ勝ちに持っていける流れがちょっとずつ構築できてきた結果が全てじゃないかな、と。本当に4年生の頑張りだったと思います。
また中央大学さんの気迫も前半は凄まじいものがありました。先制トライも取られましたが、雰囲気にのまれることなく自分たちでやってきたことをしっかり出せた、本当に良い内容だったんじゃないかなと思います。
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由比藤聖 共同キャプテン
入替戦という独特な雰囲気がある中で、前半は中央さんのテンポの速いアタックに押されてしまった部分ありますが、そこで1回チーム全員話し合って、セカンドマンのところなど試合中に修正することができた。なんとか自分たちの流れにもってきて、最後勝ちきるところまでもっていけたのはすごい良かったと思っています。
今年1部に残留できて、来年後輩たちに1部の舞台を残せたので。良かったです。
内川朝陽 共同キャプテン
今回の勝利は、前日に行ったメンバー外とのアタック・ディフェンス練習が非常にキーになったと思っています。
そこでメンバー外の選手たち、特に4年生が中心となって、今日の入替戦以上に体を当ててくれたこと。試合に出られない4年生の意地というか。どこで貢献するのか、ということをメンバー外が一番分かってくれていて、体を張ってくれました。
毎回、練習が終わって遅い時間まで応援練習を4年生中心にやってくれたことが、1部残留できた大きな要因かなと思います。
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