桐蔭学園、2年連続ファイナルへ。國學院栃木との激闘を制した準備力。國學院栃木は「だらしない試合は1つもなかった。胸張って帰ります」|第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会

試合概要

第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会 準決勝

【対戦カード】
國學院大學栃木高等学校 14-25 桐蔭学園高等学校

【日時】
2025年1月5日(日)12:45キックオフ

【場所】
花園ラグビー場 第1グラウンド

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試合結果

國學院栃木:紫ジャージー、桐蔭学園:白ジャージー

関東の両雄が準決勝で相まみえた一戦。

先制したのは國學院栃木だった。

ゴール前でギャップを上手くついた14番・家登正宜選手がすり抜けると、前半7分にファーストトライ。

10番・神尾樹凛選手のコンバージョンゴールも成功し、7点を先制した。

対する桐蔭学園は前半16分、ラインアウトモールから7番・申驥世キャプテンが押し込めば5点を返す。

その6分後には10番・丹羽雄丸選手がペナルティゴールを沈め、8点に。

7-8、桐蔭学園がリードを奪った。

しかし前半終了間際、國學院栃木がゴール前ラックから6番・下境洋選手がボールを持ち込み、グラウンディング。

14-8、國學院栃木がリードを奪い返し、前半を折り返した。

後半は桐蔭学園が高いインテンシティを維持したまま、集中力を上げる。

ラック際を突いた9番・後藤快斗選手がトライを挙げたのは後半7分。21分には15番・古賀龍人選手がポール真横に押し込み、3トライ目。

後半終了間際には、敵陣でスクラムペナルティを得るとSO丹羽選手がPGを沈め、勝負あり。

國學院栃木の猛攻を振り切った桐蔭学園が後半の勝負強さを発揮し、14-25で決勝戦へと駒を進めた。

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桐蔭学園

チーム・桐蔭学園の強さをまざまざと見せつけた60分間だった。

前半はあえて風下となるエリアを選択した桐蔭学園。

「苦しい中でも相手のやり方をしっかりと観察し、その上で後半に追い上げるプランでした」(申驥世キャプテン)

常々「花園は後半の風上勝負」だと選手たちに伝えていた藤原秀之監督。

どうやったら花園で勝てるのか、をチームとして蓄積し続けた桐蔭学園としての結論が、この日も逆転劇を生んだ。

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6点のビハインドで折り返した後半、ゴール目前まで攻め込んでも無理に押し込むことはしなかった。

シーズン序盤にはペナルティを取られ、試合に敗れたこともあったゴール前でのFW戦。

目の前に垂れ下がる甘い蜜を我慢し、確実な機会を生み出すべく足とボールを動かせば、スペースは生まれた。

後半掴んだ2トライは、我慢の先に生まれたものだった。

守っては規律高く戦う。

前後半あわせた反則数は僅か3。

特に後半は、立ち上がりにカウンターラックを狙った時に起こったノットロールアウェーたった1つに留まった。

後半ロスタイムに入ってからは、一層運動量を増した桐蔭学園フィフティーン。

表示されたロスタイムは4分。

ピッチサイドにいる福本剛コーチから「Vラン2本分(グラウンドをVの字に走る、1本が200mのランメニュー)」との声が飛べば、否が応でもスイッチは入る。

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また前半28分には11番・石崎悠生選手が負傷退場し、急遽2年生の西本友哉選手が登場したが、戦力が衰えることはなかった。

初めてのビッグマッチを迎えた仲間を、先輩たちは温かい言葉で迎え入れる。

「ゴール前ピンチの場面で、いきなり入ってきました。相当緊張したと思いますが、気合いある表情で入ってきてくれた。『おまえがやれることだけやればいい』と僕からは伝えました。そうしたらそのあと、タックルにパチッと入っていた」と笑顔で申キャプテンは回顧する。

「桐蔭は本当に全員が準備しています。そういう所で準備が全部出たかな」

そう、桐蔭学園の強みは、桐蔭学園であること。

腹落ちするまで話し合い、全員が同じ景色を共有し、目の前の60分に挑むこと。

今年のチームに残された試合は、あと1つ。

ファイナルマッチも、桐蔭学園として挑む。

ケガから復活・チームマネージャーの献身

準々決勝で大阪桐蔭との激闘を制した後、「緩い空気を作ってしまった」と話したのは6番・小川健輔選手。

今季チームマネージャーを兼務するグラウンド内外でのキーマンは、準々決勝を終えてからの48時間をそう振り返った。

そんな時、力を与えたのはメンバー外の仲間たちだった。

「試合に出ていないBチームのメンバーが、國學院栃木の試合を何試合分も分析してくれたんです。選手1人ひとりのスタッツまで出してくれて。『じゃあ自分たちは何をしたいのか』とチーム全員で話し合うことができました」

対戦相手を分析すること。

それは小川選手自身も経験したことだった。

11月の神奈川県大会決勝直前、膝を負傷した。県大会決勝には出場できなかった小川選手。挑むチームメイトのために、東海大相模の分析を担った。

エリアごとのタックル成功率を調べ、少しでも仲間の後押しをとリハビリの合間に時間を割く。

そうして桐蔭学園は、花園行きの切符を掴んでいた。

全国大会への出場が決まった後、スタッフ陣からもっとも出場を危ぶまれていたのが小川選手だった。

「(コンディション的に)小川が一番厳しい」

12月上旬には、そんな言葉も聞かれた。

だが、今年の桐蔭学園にとって必要不可欠なピース。

当初は大阪入りしてから練習に復帰予定だったが、順調な回復を見せれば神奈川を発つ2日前に練習に合流した。

なんと今大会は、初戦・流経大柏戦から先発。

特に準々決勝・大阪桐蔭戦、準決勝・國學院栃木戦では「小川健輔ここに在り」を存分に見せつける、いくつものタックルを見舞った。

準決勝ではさすがに痛みが出た場面もあったというが「これまでは全く痛みも何にもなかった。正直、怪我する前の状態と同じコンディションでプレーできていた」とアドレナリン全開。

「体は小さいですが、運動量はある。フォワードとバックスの繋ぎ目として、しっかりと周りの選手とコミュニケーションを取ること。そして誰をノミネートするのかを自分が軸となって声を出すこと。そこ(が自分の役割)だと思います」

たどり着いたファイナルの舞台。

掴み取った決勝戦の60分間を、笑顔で終えるために。

「しっかりとミーティングをして、自分たちがしたいラグビーを決勝でも60分間やっていきたいと思います」

仲間とともに、60分をグラウンド上で戦い抜く。

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藤原秀之監督 コメント

今日はキックを蹴らずに攻めたことで、(相手の)ペナルティに繋がった。

多分蹴らないだろうな、と。普通は蹴る場面でも、あの素振りからしたら蹴らないだろうな、と(笑)

古賀を使ってきましたね。良い判断だと思います。ボールをあげなかったですね。

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