ヒガシであり続ける|東福岡

ハーフタイム。

試合に出ることのできない100人以上の部員たちは、バックスタンドから声を張り上げた。

プライドを取り戻すために。そして、東福岡であるために。

グリーンジャージーを着る者は、何のために戦うのか。誰のために戦うのか。

東福岡とは。

来年度から共学になるため、これが男子校として迎える最後の花園。

最後は、応援歌『博多のおとこ』で締め、エールを送った。

後半は一転、風上に立った東福岡がポゼッションもエリアも優位に進めた。

反撃開始は後半5分。

相手ボールラインアウトをスティールすれば、6番・梁瀬拓斗選手が体を当て、プレッシャーを受けながらも9番・中嶋優成選手が球を捌く。

5番・梁瀬将斗選手へと繋ぎ、双子戦士がボールを繋ぎながら最後は2年生の2番・須藤蒋一選手がゴールライン目前まで切り込めば、サポートに入った3番・武田粋幸選手がトライ。

まずは5点を返した。

続く追加点は後半16分。

敵陣深くでのラインアウトからモールを組むと、最後は2番・須藤選手が抜け出し中央で2トライ目。

10番・橋場璃音選手のコンバージョンゴールも成功し、12点目を獲得した。


10番をつけたのは1年生の橋場璃音選手。「一つのミスで簡単にスコアされてしまうことが分かった。3年生の悔しさを無駄にしないためにも、練習からミスしないことにこだわってこれからはプレーしたい」

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残り14分で、12-17。

あと1トライを挙げれば同点。コンバージョンゴールも沈めれば逆転。

風上の東福岡は、ハイボールを多用しながら陣地を進めた。

しかし細かなミスは続く。

『1本のパスミス、1ミリのゲイン、1つのコミュニケーション』

個々のタックルで体は張ったが、しかし攻撃面で流れを完全に掴み切ることが難しかった。

後半30分を回った頃。

自陣での相手アタックを防ぎノックオンを誘うと、すぐさま攻撃に転じた東福岡。ワイドにボールを開き継続すれば、そのまま敵陣に入った。

これがラストチャンス。丁寧にボールを離し、大胆にラックを守り続ける。

2回目に右端へボールが渡った次の、球出しでのこと。

No.8古田学央キャプテンがボールを受け取ろうとしたその時、手からこぼれ落ちる。

その瞬間、「ああ」と表情を歪めた。

試合終了の笛を鳴らした、自らのノックオン。

古田キャプテンはなんども拳を地面に叩きつけ、悔しさを露わにした。

「自分のハンドリングエラーで終わってしまった。本当に申し訳ないです」

涙を流し、呟いた。

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今年の東福岡が掲げたスローガンは『咲』。

まさしく一つの生命が成長するように、少しずつ東福岡らしいラグビーができるようになった、この1年だった。

先輩たちが培ってきた土壌に水をやり、肥料を蒔き、根を張った。そして11月の福岡県大会決勝ではようやく、開花の時期を迎えた。

シーズンがスタートして10カ月。二分咲きの季節は訪れ、そして12カ月目で『九分咲き』までたどり着く。

「全国選抜大会での1回戦負けから始まって、花園ではベスト8。しんどい想いを積み重ねた1年でした。満開にはできなかったけど、八分咲き、九分咲きくらいは咲かせることができた。満開の日は、今日もたくさん出場していた後輩たちに託したいと思います」(古田キャプテン)
花園の場で咲かせることのできなかった満開の笑顔。
だが決して、3年間過ごした日々を満開に彩れなかったわけではない。
藤田監督は、選手たちの気持ちをおもんぱかった。
「選手たちは、過去の記録をプレッシャーに感じていました。でもそれを背負っていくのが東福岡。毎回のミーティングで『東福岡高校であり続けるためにはどうしたらいいのか』と積極的にアプローチしてきました。今日のゲーム、特に後半は『東福岡であり続けた』と言ってあげていいのかな」
そして、言った。
「東福岡、東海大大阪仰星、常翔学園、桐蔭学園。それぞれの学校であり続けているチームというのは、こういうこと(敗戦)を耐え忍んで後輩に継承しているのだと思います。今日は格好良いグリーンジャージーを見せてもらいました」
全国選抜大会で選手宣誓を務めた、古田キャプテンの言葉がある。
今、私たちができることは、高校ラグビーです。選手のみなさん、見せましょう、高校ラグビーの力を!伝えましょう、高校ラグビーの感動を!
勝っても、負けても。
泣いても、笑っても。
真っ直ぐに高校ラグビーと向き合ったチーム学央。

「本当に1年間、きつかったです。試合後バックスタンドにへ挨拶に行った時、僕は泣き崩れてしまって立てなかったのですが、スタンドから3年生たちが『ガクア』と自分の名前を呼んでくれた。その声で僕は、立ち上がることができました」(古田キャプテン)

高校ラグビーに打ち込んだ全ての選手たちに、あっぱれを贈ろう。

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試合に出ることのできなかった、3年生がいる。

先発メンバーの半数が下級生となった今季、東福岡高校ラグビー部の多くの3年生たちが涙を呑んだ。

そのうちの数名は分析班として花園でもチームに帯同し、昼夜を問わずチーム学央を支えた。

敗退が決まった直後。

泣き崩れる深田衣咲選手の背中を支えたのは、30人の登録メンバー入りならなかったSO黒坂薫平選手だった。

2年時にはU17オール九州のスタンドオフとしてコベルコカップにも出場したが、最上学年となった今年、グリーンのスタンドオフを務めたのは1年生。

悔しくて泣きたくなった日を数えたら、試合に出ていたメンバーよりもきっと、多かっただろう。

だがこの日、花園ラグビー場の第1グラウンドを後にする時の表情は、誰よりも優しく、誰よりも誇らしげに映った。

東福岡高校ラグビー部の一員として歴史を積み重ね、そして後輩たちに託すこと。
東福岡高校は、2025年に創立70周年を迎える。
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