公益財団法人日本ラグビーフットボール協会は、U19イングランド代表と戦う2024年度高校日本代表の試合登録メンバーを発表した。
試合は現地時間3月22日14:00、日本時間23:00にキックオフを迎える。
なお試合はJAPAN RUGBY TVでライブ配信される予定だ。
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第50期高校日本代表に選ばれた選手は29名。
うち28名がイングランドへ遠征し、26名がU19イングランド代表とのテストマッチに挑む。
エディー・ジョーンズ日本代表HCから直接指導を受け、急成長中の小林祐貴選手(慶應義塾)。
U17日本代表ではキャプテンを務めた、世代屈指のキャプテンシーを有する野口健選手(流経大柏)。
そして3年間花園に出場することはなくとも、国スポ制覇を達成した大久保幸汰選手(御所実業)。
3名それぞれに、イングランド戦を控えしその想いを聞いた。
12番・小林祐貴(慶應義塾)
慶應義塾高校での3年間を終えたのは、11月。
12月にはU19日本代表に選ばれ、アジアラグビーU19チャンピオンシップで優勝を果たした。
アジアのチャンピオンチームの、スタンドオフ。
浮足立ってもおかしくない実績を手にしたが、それでも「高校日本代表に選ばれることが第一目標』をブラさなかった。
「フィットネスを落とさないよう、12月末からは個人でできることをやっていました。家の周りを走ったり、ブロンコをしたり。ボールを使った練習は、あまりしていません。U19日本代表で一緒だった染谷昌宏(成城学園)や山口滉太郎(早稲田大学系属早稲田実業学校高等部)と2回ぐらい一緒に練習して、ボールを触りました」
U19日本代表での活躍が評価されれば、『JTS』と呼ばれるエディー・ジョーンズ日本代表HC肝入りの『ジャパン・タレント・スコッド』にも選ばれた。
高校日本代表合宿の合間をぬって、2度ほどJTS合宿にも参加。
ジョーンズHCからも直接指導を受け、短期間で大きな成長を見せる。
「実力的にはまだまだだと思いますが、やってみたら以外とすんなりできてしまった所もあります。課題はあるけど、めちゃくちゃ成長できています」
一気に階段を駆け上がった。
U19日本代表に、JTS。桜のエンブレムに触れる機会が、突如として増えた。
「急に成長しすぎて、変な感じ」と小林選手自身は表現する。
成長期に身長があっという間に伸びる瞬間と、似たような感覚だろうか。
高校3年間での成長よりも、ここ数カ月の方が「格段に」成長幅があるという。
小林選手が挙げる現在の課題は、キャッチとパス。
ステップを駆け上がる今、改めて基本の大切さに気付いた。
「良い判断をするためには、キャッチ・パスに頭を割くことができません。だからキャッチとパスを完璧にしないと、もう一段上のレベルではやっていけないと感じました」
またジョーンズ日本代表HCからは、キックの精度とスクエアに真っ直ぐ走ること。この2点の改善点を与えられているという。
「ボールをもらって流れてしまうと、インターナショナルな舞台では通用しないと言われました。だからボールをもらったら、真っ直ぐ仕掛けることが課題です」
U19日本代表ではスタンドオフ務めたが、高校日本代表では12番を担う。
「スクラムハーフと13番以外ができることが強み」というユーティリティー性を生かして「出られるところでどんどん勝負していきたい」と怖いもの知らずな一面をのぞかせた。
「U19イングランド代表は、すごく強いと思います。でも僕たちは『Beat ENGLAND(イングランドを倒す)』を掲げてトレーニングしてきました。強気で、楽しみながら、自分の全力を出して勝ってきます」
果たして、イングランドの地でいかにして化けるだろうか。
20番・野口健(流経大柏)
12月30日。
全国高校ラグビー大会2回戦で、桐蔭学園に敗れた流経大柏。
流経大柏のキャプテンを務めた野口選手は、その後の花園の試合を見ていない。
「流経大柏での新チームの練習に加わったり、自主的にウエイトトレーニングをしたり。正直、高校日本代表の最終候補に選ばれるかどうかも不安な中、1人でトレーニングしていました」
夢半ばで敗れたことが悔しかった。
自分の花園は終わった。
選ばれるかどうかは分からないが、高校日本代表入りに向けて専念しよう、と切り替えた。
第50期高校日本代表に名を連ねたことが決まった後、2月上旬のこと。
桑原立監督からディフェンスリーダーの打診が届いた。
U17日本代表では、桑原監督の下、キャプテンを務めた野口選手。
「正直、ちょっと悔しい部分はあったのですが・・・(笑)」と笑った。
「(高校日本代表のキャプテンを務める)キセ(申驥世)は同じポジションで、信頼できるヤツです。ディフェンス面でのワークレートは自分の武器だと思っているので『ディフェンスリーダーとしてよろしくお願いします』とお伝えしました」
イングランド遠征直前には、U23日本代表入りを目指すJTSスコッドとの合同練習を行った。
セットして前に出ることができれば、良いディフェンスはできた。だがコンタクト時にFWが引いてしまうと、苦しい展開に。
「まずはFWが前に出て、前で止める大切さを学びました」
体躯の勝る相手に対しどのようなディフェンスを目指せばいいか、実践で学んだ。
掲げるキーワードは『一殺』。
一度のコンタクトでしっかりと潰しきることをもう一度、U19イングランド代表を相手に追求したい。
「代表は勝たなければ意味がない。流経大柏で得た知識を生かしながら、しっかりと世界で通用する選手になりたいと思います。声を出して、全員を盛り上げてきます」
24番・大久保幸汰(御所実業)
国民スポーツ大会「SAGA2024」を制覇した御所実業。
しかし全国高校ラグビー大会 奈良県大会決勝で天理に敗れ、本大会出場を逃した。
「ディフェンスで前のめりになりすぎてしまって、立ち位置オフサイドを取られてしまった。ディフェンスでやらかしてしまった結果、相手を波に乗せてしまいました」
国スポ王者。それでも花園には出られない現実。
悔しかった。
「むちゃくちゃ、悔しかったです」と言った。
11月17日に御所実業での高校ラグビー生活を終えた大久保選手は、「なかなか切り替えることができなかった」という。
「夜も寝られなくて、負けた実感が沸かなかった。でも新チームが改革を始める姿を見て『あ、終わったんだな』と思いました」
結果的に、3年間花園に出場することはできなかった。
だが、ラグビーを嫌いになることはなかった。
ラグビーから離れたくもなかった。
だから、下級生とともにグラウンドに出て、いつもどおり御所実業でのメニューに取り組んだ。
「一度ラグビーから離れる、っていうことができなかったんです。無意識にグラウンドに向かっていました」
新チームに肩を貸しながら、ラグビーのレベルを落とすことはなかった。
1月末に行われた高校日本代表候補合宿に集ったセンターの選手は7名。そこから4名に絞り込まれ、大久保選手は無事メンバー入りを果たした。
「御所の仲間からは『頑張ってこい』と背中を押してもらいました。先日の卒部式では、みんなが温かく送り出してくれて。頑張るしかないな、と思いました。御所の代表として、感謝の気持ちを持って、しっかりとプレーしたいと思います」
高校日本代表の天理合宿中に足首を負傷し、しばらく通常メニューからは離れたが、イングランド遠征で実践復帰済み。
「高校生1万7千人の中で選ばれた代表29人。自分たちは29人で戦うのではなく、自分たち『06世代』の代表としてイングランドに行ってきます。個人としてではなく、日本を代表して戦うプライドを忘れずに、責任感を持って戦って、勝って帰ってきます」
負けを知るからこそ、できるプレーがきっとある。
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