2025年の大学ラグビーシーンも、まもなく幕を開ける。
「そういえば、あんなことがあったな・・・」
ある夜、散り始めた桜を見上げながら、昨年目にした数々の表情を思い返した。
新しい学年が始まり、就いた役職に奮闘しているであろうキミも。スーツを着て満員電車に乗る、サラリーマン生活をさせたあなたも。
はじまりの前に、あの時のあの表情を、少しばかり思い返してみてほしい。
15
近年の大学ラグビー界では、フルバックが豊作だ。
言うまでもないが、すでに日本代表キャップを有する矢崎由高選手(早稲田大学3年)がその筆頭だろう。
他にも昨冬U19日本代表としてプレーした立教大学の大畑咲太選手は、15番として対抗戦全試合フル出場。
高校時代に東福岡高校で全国制覇を成し遂げた15番・石原幹士選手は現在帝京大学でプレーしており、おなじく帝京大学には、國學院栃木高校の名将・吉岡肇監督が「飛車角」と表現した青柳潤之介選手もいる。2人は2024年、ともに対抗戦での「15番デビュー」を果たした。
筑波大学には7人制の経験も豊富で、JAPAN XVやU20日本代表としてのプレー歴もある増山将選手が所属。
お気付きだろうか。
そう、彼らは全員、今年大学3年生。
この世代のフルバックは、まさしく群雄割拠なのだ。
そんな中、昨夏行われたワールドラグビー U20トロフィーでU20日本代表の15番を務めたのは竹之下仁吾選手(明治大学3年)だった。
全試合で桜の15番を背負った竹之下選手だが、高校日本代表時には矢崎選手に15番を譲っていた。
当時高校3年生。アイルランドの地でつぶやいた言葉が、今でも心に残る。
「海外の選手に勝つ前に、同年代のライバルに勝たないと」
それぐらい厳しい、15番争いなのだと言った。
明治大学入学後も順調に成長を続けた竹之下選手は、晴れてU20日本代表の正フルバックとなった。
スコットランドの地で、見せてくれたものがある。
ワールドラグビー U20トロフィー大会に参加した選手たちに配られた、水筒だ。
各国で色が異なるそうだが、日本には黄色があてがわれる。
そして竹之下選手が持つものには『15』の刻印があった。
それぞれの水筒には1から順に数字が書かれており、選手たちが自由に選んだそうだ。
竹之下選手の手元には『15』と書かれたボトルがあるが、これは自らが手に取ったのではない。
高校・大学と同じチームでプレーする海老澤琥珀選手(明治大学3年)が「はい、これジンゴの」と渡してくれたのだと笑った。
15。
プレッシャーに耐え、時には起こるミスに挫けることなく、ライバルに打ち勝ち、手にした桜の15番。
自分でこの番号を選ばずとも、仲間が「15はジンゴのもの」と認めてくれたこと。
その喜びと誇らしさが、スコットランドの地で、和らかな笑顔に宿った。
桜の15番を着た景色とは。「これがスタートだ、と大久保直弥U20日本代表HCに言われました。でも、スタートラインはまだまだ先、だと思っています」