キンダイを選んでよかった、絶対
昨季、3大会ぶり11回目となる全国大学ラグビーフットボール選手権大会出場を果たした近畿大学。
準々決勝の舞台で司令塔を務めたのは、西柊太郎選手(当時2年生)だった。
高校時代にはインサイドセンター。
だが「将来的には複数ポジションできるほうがいい」という監督・コーチ陣からのアドバイスを受け、大学入学以降は10番にポジションを移した。
2年生では再び12番を務めるようになったが、この日はチーム編成上10番に戻る。
「スタンドオフはゲーム全体を見て、試合を組み立てないといけない。どうゲームを運ぶかと考える力が身につきました」
秩父宮ラグビー場で初めてタクトを振るった思い出は、決して良いものばかりではない。
自陣深い位置で飛ばしパスを放るとインターセプトを許し、被トライを浴びる苦い経験もした。
そんな時にも「落ちるな」と、次々に肩を叩きにきてくれたのは4年生たち。
「4回生に恵まれました。ラグビーだけでなく、私生活でもかわいがってもらいました。思い入れが強いです」
”4回生”のおかげで、充実の日々を送ることができたのだと言った。
試合後。チームスーツに身を包んだ西選手は「近大に来てよかった、と間違いなく言えます」と屈託のない笑顔を見せた。
人として成長できたこと。
人に出会って、吸収できたこと。
考え方の幅が広がったこと。
「キンダイを選んでよかった、絶対」と繰り返した。
だからこそもう1試合勝って、大好きな先輩たちを国立に連れて行きたかった。
「4回生と大学選手権に行きたい、と関西大学Aリーグを戦って。大学選手権3回戦では『4回生と一緒に秩父宮ラグビー場に立ちたい』と戦いました。4回生と一緒に、国立にも行きたかった」
試合後。止まらぬ涙を零し続けた西選手。
その涙は、すべて4年生に向けられたものだった。
「4回生のためにできなかった悔しさと、4回生ともう一緒にラグビーができないという悔しさ。そういう涙だったかな、と思います」
試合後、2年生たちは自ら声を掛け合い円陣を組んだ。
「俺たちも、ああいう4回生になろう」と、日の暮れた秩父宮ラグビー場で誓った。