長野県上田市菅平高原・アンダーアーマー菅平サニアパークにて行われている、第12回全国高等学校7人制ラグビーフットボール大会。
ディフェンディングチャンピオンの桐蔭学園は、2大会連続の優勝を狙う。
今年もまた、桐蔭学園には頼れる“助っ人”が帯同している。
2019年に卒業し、現在は浦安D-Rocksで活躍する小西泰聖選手。銅メダルを手にしたユースオリンピックの経験を持ち、ここ3年はセブンズチームの指導役として母校に関わり続けている。
「今年は頑張れる子が多いんです。トライを取られても折れない、粘り強いチームです」
小西”コーチ”は、2025年度のチームの特色をそう語る。
桐蔭学園は予選プールから、しぶとく食らいついてくる相手と接戦を重ねてきた。
「頑張るチームと当たってきました。そしてそこに対してちゃんと勝ってきた。そういう意味では選手たちに自信がついているんじゃないかな、と感じます。実践をとおして成長しました」
準々決勝・仙台育英戦でも先制点を奪われる苦しい展開となったが、チームは一切下を向かなかった。愚直にボールを追い、逆転で準決勝へと駒を進めた。
「これまでの戦いが、内容的に“いい試合”だったかと言われれば、そうじゃない。でも結果として勝ち切れている。それは粘り強さと実戦の中での成長の証です」
セブンズという競技は、密度の高い短期決戦だ。一戦ごとに対応力と柔軟性が養われた。
いよいよ迎えるファイナルデー。3年連続の4強入りを果たした秘訣は、「時間の使い方」にも表れる。
「もう何かを付け加えることはしません。学校で行った最後の練習の時に『ここからなにかプラスアルファできることはない』と伝えました。今はとにかく『寝ろ』『休め』それだけです」
セブンズ特有の連戦、炎天下での消耗。勝ち抜くために必要なのは、“最後の仕上げ”ではなく“回復”。そしてそれを「全員で」やることが大切だ。
「この大会を戦いきる上では、今ここにいる15人全員で戦う必要があります。全員でしっかりと繋がること。勝つために休むことも、“全員で”やるんです」
宿舎での時間も、アップの時間も、ピッチの中も外も、すべてが「チームで勝つ」ための行動でなければならない。誰か1人が自分のタイミングで休むのではない。全員で整え、全員で同じ方向を向く。それで、このチームの強度は増す。
「それを“コネクト”と呼んでいます」
桐蔭学園のセブンズチームに関わり3年目。
小西コーチは「自分の中に最初から完成形を持っているわけでもない」と断りを入れたうえで、今年のチームを見て一層「セブンズって色んなチームがあっていいな、と思いました」と心境の変化を語る。
足の速い選手が7人いるチームがあったっていい。縦に行く人たちが7人いてもいい。
「何にこだわって練習してきたのか、というチームの特色が表れる大会です。だから速いランナーやパワフルな選手がいない今年の桐蔭学園もまた、それが特徴だなと。それでいいんだな、と割り切って見られるようになりました」
何より大切なのは、「セブンズ風」にチームをつくることはあっても、「セブンズにしてしまわない」こと。
あくまでも現役選手たちの最終目標は、1月7日に花園ラグビー場で大優勝旗を掲げることにある。
「15人制で培った自分たちの強みをどうセブンズで表すか。そしてセブンズで得た学びをどう15人制に還元するか」
だから「セブンズ風」でいいのだと言った。
7人ではなく、登録メンバー15人で戦ったこれまでの2日間。
積極的にメンバー交替をしながら、全員がプレータイムを積み重ねた4試合。
だから最終日もまた「みんなで1トライを取りましょう」(福本剛セブンズチーム監督)と「全員で」を強調する。
自分たちが持つ強みを信じ、いまのこのチームだからできる戦い方を選び、桐蔭学園は今年流の頂点を目指す。
