9月13日に幕を開けた関東大学ラグビーリーグ戦1部。
10月12日(日)、熊谷スポーツ文化公園ラグビー場Bグラウンドで行われた法政大学 対 東洋大学の一戦は、21-45で東洋大学が勝利。開幕からの連勝を3に伸ばした。
試合は開始直後から動いた。
キックオフからわずか1分足らず、11番・中山二千翔選手がノーホイッスルトライ。勢いに乗ると、ラインアウトを起点とした攻撃から2番・小泉柊人選手がハットトリックを達成。
東洋大学は前半だけで6トライを重ね、31点差をつけて折り返した。
しかし後半は様相が変わる。
5分に9番・生田旭選手がトライを挙げたものの、それ以降は法政大学に流れを明け渡し連続失点。
後半のスコアだけを見れば7-14とリードを許した。
実は東洋大学、前節・関東学院大戦から、後半でスコアを下回る展開が続いている。
「我慢」の欠如を課題に
No.8ステファン・ヴァハフォラウ主将は、その要因を「我慢ができていない」と指摘する。
「いらないペナルティが増えてくると、苦しい時間が増えてしまう。自分たちがディフェンスでもう少し我慢できれば、マイボールに変わるはず」
強気な姿勢はチームの持ち味。だが、アグレッシブであることと無謀なプレーは異なる。前半と後半のメンタル面に、改善の余地を見出した。
率いる福永昇三監督もまた「気にはしているが、悲観する状況ではない」と前を向く。
課題克服のため、これまで避けてきたゲーム週のフルコンタクト練習を、今季からあえて導入した。
「ディフェンスには、流れも雰囲気も関係ない。タックルしない人がいるか、怠けるか、手を抜く人がいるだけ。それをなくそう」と激しい練習を重ねた。
さらに「疲れを言い訳にしない。辛苦な時こそ凡事徹底し、我慢比べに勝つ」と指針を示した。
声でつなぐディフェンス
課題は選手の口からも語られた。
ウイングの浅尾至音選手は「自分が言葉を発して、返ってくるまでのコミュニケーションが前半は取れている。でも後半になると、言葉が返ってこなくなって。言いっぱなしになっているな、と感じます」と振り返る。
チームで「リンク」と呼ぶ『繋がり』が途切れてしまうのだという。
「相手に食い込まれると会話の時間が短くなる。相手のテンポが上がると、さらに話せなくなる。そういう場面で言葉が減るのだと思います」
だがこれから先、リーグ戦上位校との対戦や大学選手権を見据えれば、そういうった局面が増えることは間違いない。
だからこそ「そこが課題」と浅尾選手。
「留学生もいる中で、全員が繋がりをもってワンラインでディフェンスができたら、全然ディフェンスは大丈夫だと思います」と力強く話した。
川越に根ざす「ホーム初開催」
次節は10月25日(土)、立正大学戦。
会場は東洋大学の地元・埼玉県川越市の川越運動公園陸上競技場だ。同所には今年新たにラグビーポールが設置され、ラグビーの公式戦が有料試合として開催されるのはこれが初めてとなる。
ヴァハフォラウ主将は準備の様子を笑顔で語った。
「学校でポスターを貼ったり、授業で一緒になった人たちに『ぜひ来てください』と伝えたりしています。川越でのホームゲーム、負けないようにしっかり準備します」
当日は川越市長も来場予定で、試合後には観客もピッチに下りられる「フィールドウォーク」が実施される見込みだ。
地域の期待と誇りを背に挑む一戦。
埼玉の地で躍動する2つのトップチームの戦いを、ぜひスタンドから応援してほしい。
「1週ごとの課題を、しっかりと解決できるように。そして寒い時期に入ってきて、対戦相手も強くなってくる。自分たちにフォーカスをして、自分たちの全力を出したいと思います。もちろん優勝は目標。でも、次の対戦相手に焦点を絞って、戦う準備をしていきたいと思います」(ヴァハフォラウ主将)
Pick Up Players
浅尾至音(CTB/WTB)
開幕戦・日本大学戦ではリザーブから出場すると、急遽ウイングとしてピッチへ。以降「最近はウイングをやっています」と語る。
「楽しいです。外のスペースでフィジカルを生かせた時に喜びを感じる。走り切ってトライを取り切れるようになりたい」
法政大学戦でも1トライを挙げ、可能性を広げた。
ナモア・ファタフェヒ(FL)
トンガ人の両親の下、アメリカで生まれ、トンガとアメリカの2重国籍を有していたが、およそ1カ月前に日本国籍を取得。
ラグビー協会からも正式認可を得て、法政大学戦から正式に「日本人」としてプレーした。
「初めて日本人として試合に出られて嬉しい。これからもチャンスを増やしたいです」
父は大東文化大や三洋電機で活躍したワテソニ・ナモア氏。2020年に逝去したが、与えてくれた名を背負い「チームのために役立つ選手になりたい」と誓った。