ラグビーの季節がやってきた。
約半年ぶりの公式戦。そして、3年生にとっては最後の戦い。
花園を目指し、青春をかけて戦う選手たちをレポートする。
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試合概要
【対戦カード】
埼玉県立所沢北高等学校(以下、所沢北)v慶應義塾志木高等学校(以下、慶應志木)
【日時】
2020年9月27日(日)11:30キックオフ
【場所】
川口北グラウンド
試合結果
所沢北 7 – 52 慶應志木
試合展開
トップリーガー4人を輩出し、『プレッシャーディフェンス』を伝統としてきた所沢北。対するは、新人戦まさかの初戦敗退でノーシードとなった慶應志木。
共にディフェンスを武器とするチーム同士の好ゲームが、1回戦で実現した。
「僕たちはゼロスタート。全員が初心者です。監督・コーチ・OBの方々に、ルールを教えてもらうことから始まります。戦術を組み立てる工程が楽しかったですね。」そう話すのは、所沢北でキャプテンを務める藤森翔太朗選手(3年生、8番)。
そんな彼らが今回、慶應志木対策で用意したのはキックゲーム。今まで慶應志木相手にはやったことのない戦術だった。
「トコキタは選手たちがプランを決めます。」
作戦通り、序盤からキック合戦になった。蹴っては蹴り返され。また蹴っては蹴り返され。なかなか前に進めない。相手FWに押し込まれ、前半9分にはモールトライを許した。
しかしそこで諦めないのが、『信と絆』をモットーとする所沢北。
幾度となく、キックを蹴り返す。
すると前半12分。高く蹴り上げたボールを慶應志木がノックオン。相手陣22m付近でのスクラムから出てきたボールを受けた15番柳澤選手が、そのまま駆け抜けてトライ。反撃ののろしを上げる。
直後、慶應志木が相手インゴールまで行くも、ペナルティでノートライとなる一幕が。
風向きが、所沢北に傾いたかと思われた。
しかし。
チャンスを逃さずブレイクダウンの強さを発揮し始めた慶應志木に対し、所沢北は一瞬の判断の遅れが目立ち始める。なにより、3番目の寄りが圧倒的に慶應志木の方が速かった。
結果、温存していた主力組を後半投入し、計8トライを奪う猛攻をみせた慶應志木がそのまま勝ち切った。
試合後、竹井章監督(慶應志木)は言う。「今日はBチームのハーフ団に経験を積ませました。バックスのカウンターアタックが上手く機能しなかったので、次戦では修正していきたい。」
***
ハーフタイム、柳澤監督(所沢北)は選手に声を掛けた。「まだ自分たちを信じ切れていない。」
試合終盤、ベンチから飛んだのは「ミスしてもいいから攻めよう。ガムシャラを見せよう。」
良いプレーには拍手し、トライには無邪気に喜んでマネージャーとハイタッチする。良いチームの雰囲気は、監督発でもあった。
試合終了後、監督は選手たちに「挨拶して回りな」と声を掛けた。キャプテンをはじめ、選手がマネージャーのもとに挨拶に行く。7月に先に引退した、3年生マネージャーも今日は応援に来ていたのだ。
練習では水を汲み、試合ではビデオ撮影係も兼任。そして、勝利を祈る。
試合終了直前、マネージャーから選手たちに声が掛けられた。「あと2分!頑張れ!」
今日一番の声が、選手たちから聞こえた。
各校1名まで入場が許される保護者代表。所沢北は、今年度のカメラマンを務めた武田さん(3年生のプロップ武田選手の父)が、カメラを担いで回っていた。
暑い日も寒い日も、試合があれば写真を撮りに行った。今大会は無観客試合で保護者も入場できなかったため、オンラインでの生中継システムを保護者会で独自に構築もした。カメラ越しに語られたキャプテンの最後の挨拶は、きっと全ての親御さんに届いているはずだ。
信と絆。それは決して、選手たちに限ってのことではない。関わる人全てが、信と絆を体現する。それがトコキタラグビー。
藤森キャプテンは言う。「3年間戦ってこれたことが嬉しい。関わってくれた全ての方々に、心から感謝しています。」
大学でも、ラグビーを続けるつもりだ。
試合後コメント
慶應志木 武井章監督
「今日はバックスに突破力がなかったので、フォワードに頼らざるを得ない状況になった。次戦はフォワードで圧倒することはもちろん、強いランナーを入れていきたい。」
所沢北 柳澤裕司監督
「練習でやってきたことをグラウンドで表現できたと思う。点は取られたが、相手のミスも誘いながら選手たちはよくやってくれた。今年のチームには1・2年生が9人入っているので、糧にして欲しい。」
所沢北 藤澤キャプテン
「点差は離れたが、やってきたこと、やりたかったことは出来た。最後に相応しい戦いができた。」
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