ラグビーの季節がやってきた。
約半年ぶりの公式戦。そして、3年生にとっては最後の戦い。
花園を目指し、青春をかけて戦う選手たちをレポートする。
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試合概要
【対戦カード】
城西大学付属川越高等学校(以下、城西川越)v 慶應義塾志木高等学校(以下、慶應志木)
【日時】
2020年10月11日(日)13:00キックオフ
【場所】
熊谷ラグビー場Cグラウンド
試合結果
城西川越 7 – 46 慶應志木
試合展開
ノーシード校、Bシードを倒す。
今年第一の波乱は、必然にして起きた。
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今年の慶應志木のテーマは「リアクション」。その言葉どおり、特に接点における出足の早さが際立った60分だった。
絶対にゲインを切らせない。フェイズが重なるごとに、相手のポイントをどんどん後ろに下げさせる。強い。
トライを量産し、躍動していた10番はなんと2年生。しかも、扁桃腺を腫らして先週日曜日から練習が出来ず、ぶっつけ本番だったというから驚きだ。「3日前に復帰してから、とりあえず息を上げる練習だけしてきた。体自体は疲れていない」と言い切る石垣選手は、宇都宮ラグビースクール出身。タイガージャージに憧れて、慶應志木に入学した。飄々とした佇まいからは想像できない力強いランが、この先どこまで通用するか楽しみだ。
最後尾から大きな声で指示を出すバイスキャプテンの15番・齋藤選手は、中学まで野球部でキャッチャーをしていた。FWに対してもラック周りの修正を指摘する視野の広さは、さすがキャッチャー出身。「今日はゲームプラン通りに圧倒できた部分がある一方、細かいミスも目立った。昨年、準々決勝で浦和に1トライ1ゴール差で負けた悔しさを知っている選手がいることも僕たちの強み。やるべきことをやって、昌平には強みの部分で勝っていきたい。」
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新人戦で初戦敗退した慶應志木は、ノーシードからの戦い。しかし実力は折り紙つきで、Bシードの城西川越・田口智一監督は「あくまでチャレンジャー」として立ち向かった一戦だった。
相手の10番が速いことは知っていた。だからこそ対策も練っていた。だけれども、追いつかない。1人抜かれ2人抜かれ。あっという間に、独走トライを何本も許してしまった。
重量級のFWを擁し、ゴール前ではゴリゴリ押し込んで行く戦法だったが、今日はそこまで行かせてもらえなかった。慶應志木の接点の強さに、監督も舌を巻く。
それでも明るい材料があった。1年生ながら出場した9番の堀越選手が、戦えたこと。ポイントへの寄りも早く、正確な球捌き。どこかで聞いたことのある名前だと思えば、立正大学ラグビー部監督を務める堀越正己氏の弟・弘二氏の息子だという。父も、早稲田大学や三洋電機で活躍した名SHだ。まだ1年生、これからの成長が楽しみな選手だ。
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慶應志木は、例年であればこれから慶應義塾高校や慶応義塾大学との練習を重ねる。だが今年は、新型コロナ対策で各校出入りができない。
「今日の試合はなかなか継続できず、テンポが悪かった。もっと競った試合になると思っていたが、バテバテでもコンバージョンゴールを外してもこれだけ点差がついたのは、自力がついてきたということ。前向きに捉え、あと3週間出来ることをやっていくしかない。」
監督自ら「今年の選手たちには感心しています、偉いと思いますよ」と褒めるには理由がある。新型コロナが猛威を振るい始めてから6月末までのおよそ4か月に渡る自粛期間中、一切選手たちと連絡を取らなかった。あえて突き放すことで貪欲になった選手たちは、自らでオンライン合宿やトレーニングを考案したという。
コロナ以降、前後半戦った練習試合は2試合だけ。合宿に試合に練習にと毎年バテバテになる選手たちだったが、今年は集中力が違う。ラグビーに飢えていたからこそ、吸収力が過去最高の状態だ。
ノーシードの今大会、準決勝の相手は昌平。タイガージャージ旋風をどこまで巻き起こせるか。
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試合後のコメント
慶應志木 竹井章監督
「(準決勝の昌平戦に向けて)今まで通り、自分たちのラグビーをするだけ。普通に戦えるチームになったと思う。」
慶應志木 山田空太キャプテン(2番、3年生)
「1・2回戦ともに自分たちのペースが掴めず、手こずった部分があった。今日は最初から自分たちのペースで試合ができるよう意識して試合に臨んだ。(次戦に向けて)FWでいかに前に出れるかが鍵。」
城西川越 田口智一監督
「予想通り接点が激しく強かった。1人目でなかなか止められなかった。練習していたラインアウトモールで1トライとれたので、やりたかったことはやれた。点差以上に、やりたかったことをやれたとは思う。」
最後のノーサイド
城西川越 田口監督から、選手たちに向けてのメッセージ
「3年間、城西らしく笑顔溢れる戦いをしてくれた。僕も一緒にいて楽しかった。」
城西川越 中村隼人キャプテン(1番、3年生)から、準決勝に進んだ慶應志木に向けてのエール
「私立の男子高同士縁がある。このまま花園まで勝ち進んでほしい。」
慶應志木 山田キャプテンから、城西川越へのエール
「同じ西部地区で1年生の時からずっと試合してきた。城西川越の思いも背負って、昌平に絶対勝ちたい。」
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