試合展開
ピッチイン前、どこか緊張した面持ちの昌平フィフティーンに握手して回ったのは、バイスキャプテンの山口大悟選手(6番)。昌平は、保護者による揃った拍手の応援を受けながら入場した。
1st 30mins
昌平ボールでキックオフすると、そのボールを正智深谷はノックオン。じつはこの日、朝から風が舞っていた。風上にいるかと思えば、風は止み、しばらくすると風が舞う。難しい風のコントロールが、キーポイントになりそうだ。
互いに硬い出だしとなった試合序盤。最初に主導権を握ったのは、正智深谷だった。
インゴールまであと5m、というエリアで攻め立てる。ラインアウトにスクラム、そして7番・田口大揮選手のキックチャージ。前半20分間のボールポゼッションとエリアマネジメントは、圧倒的に正智深谷が勝っていた。
しかし、残り5mが遠い。FWで粘るも、8人中5人が1・2年生の正智深谷陣営は、粘りきることが難しかった。得意のバックスに展開しトライを狙うも、ノックオン。なかなか、5mの差を縮めることができない。
対する昌平は、前半20分。エース・北川拓来選手(23番)を登場させた。実は準決勝で肩を痛めており、ここまで温存していたのだ。事前の構想では、後半競った展開で投入しようと考えていた。しかしなかなか得点が奪えず、縦に強く右にも左にも対応できる北川選手を早めにピッチインさせる。
これが、効いた。
御代田監督が「エース」という理由が、一目瞭然。持って、当たって、走る。2年生・北川選手のプレーが、一気に試合の流れを手繰り寄せる。
前半24分、昌平はこの試合初めて敵陣5mに入った。
初めてのチャンスエリアでのラインアウトをしっかりとキャッチした昌平は、3番・菅野侑多朗選手がトライ。
風下の昌平が、5点をリードし折り返す。
Last 30mins
やはり、この試合のキーマンは北川選手だった。
彼がボールを持つと、流れができる。勢いがつく。正智深谷のディフェンスも寄ってきて、スペースができる。
勢いに乗った昌平は、ラインアウトモールから6番・山口大悟選手がトライを奪う。バイスキャプテンでフォワードリーダーの山口選手に対しては、ベンチから様々な指示が飛んでいた。ディフェンスもラインアウトも。そんな彼がトライを決めるのは、なんだか嬉しい。
後半6分、昌平10点とリードを広げる。
直後のキックオフ、正智深谷は果敢にボールを奪いに行った。結果相手ボールになってしまうものの、正智深谷の「勝ちたい」という気持ちを感じた瞬間だった。花園に、行きたい。
正智深谷にとっては、久しぶりの決勝。昨日のジャージプレゼンテーションは、今までで一番気合いが入っていたという。
後半も25分が過ぎ、2トライ2ゴール差以上がついても「あとちょっとで終わりだぞ!」「やりきろうよ!」との声が飛ぶ。決勝の舞台で、すべてを出し切ることの意義。なにより、難しさ。
果敢に正智深谷の9番・茂木吉平選手がインターセプトを狙うも、残念ながらノックオンに。8番・大澤光希選手が肩を叩きに来る。---大丈夫、気持ちは伝わったーーー そう言っているかのようだった。
少しした後、吹かれたノーサイドの笛。
正智深谷 0ー17 昌平。
昌平高校、3年ぶり2度目の花園出場、おめでとう。