80分の物語
この試合に勝った方が、大学選手権に出場。負けたチームは、その瞬間に今年のチームの解散が決まる。
そんな天下分け目の戦いは、ある1人の選手によって勝負が決まった。
前半は「なかなかトライを決め切れない筑波」に対し、「接点での強さ・出足の速さを見せる日体」の構図でゲームが進む。
スクラムも、なかなか組み合うことができない。日体のアグレッシブなバインド態勢に、前半は何度も組み直しになった。「2番の安里大吾選手を中心に、自分たちのスクラムを組むことにフォーカスした」と語ったのは、筑波のスクラムを中から支えたLOの中原健太バイスキャプテン。自律を重んじるチームカルチャーらしく、矢印は常に自らへ向いていた。
なんと前半は両者ノートライ。3-6とロースコアで折り返す。
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流れが変わったのは、後半6分。筑波の22番・松永貫汰選手が松島聡選手(15番)に変わって登場すると、筑波のプレーが一瞬にして変わる。
そして、僅か3分後。この試合両チームあわせて初めてのトライが、ピッチに立ったばかりの筑波・松永選手によって決められた。
「試合の流れを変える力」を持っている選手、松永貫汰。
松永選手について、筑波の岡﨑キャプテンは「最後尾からの要求が上手い」と評す。松永選手が入ってから増えたコミュニケーションが、筑波に本来の姿を取り戻させた。
勢いを取り戻した筑波は、後半15分。バイスキャプテンの中原健太選手(4番)が押し込んでトライを奪えば、後半21分・34分には再び三度、松永貫汰選手のトライ。出場時間30分弱で、ハットトリックを決めた。
30人でプレーするラグビーで、これほどまでに1人の重みがあるものか。
試合終わってみれば、なんとトリプルスコア。筑波大学が対抗戦5位で、大学選手権への出場を決めた。