必然的に目標は『世界一』 ーRWC2023組み合わせ抽選会を受けて

ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチ


写真:日本ラグビーフットボール協会提供


抽選会が終わり、具体的な対戦相手が見えるようになってエキサイティングな気持ちになった。特にイングランドについては、エディ・ジョーンズHCと日本ラグビーとの関係性もあるので、選手にとっても楽しみな対戦になると思う。

イングランドもアルゼンチンも、どちらもオールブラックスを倒したチーム。大きなチャレンジになると思うが、たくさんの楽しみがあるプールになった。

2020年はテストマッチが出来ず、またスポーツの世界も一変してしまった。選手たちは充分すぎる程休んだが、これについてはコントロールできることではないので執着せず、まずは6月のブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズ戦にフォーカスしたいと思う。

わたし自身、来年テストマッチができることを期待しているし、必要だと感じている。多くの選手が今年試合できていないが、松島選手がフランスで大活躍していることは他の選手たちにとっても「自分たちも海外で戦える」という自信を持つきっかけになるのではないか。

個人的には日本が懐かしいし、早くみんなに会いたい。新型コロナの影響でおかしな年になってしまったが、1月末に日本に戻ることが待ちきれない。選手やスタッフともメールやズームで連絡を取っていたが、直接会えることは何より。トップリーグの開幕含め、とても楽しみにしている。

 

ーー組み合わせが決まるまでの心境は

時差の関係で深夜2時頃ではあったが、疲れよりもエキサイティングな気持ちの方が大きかった。2023年は、大成功した2019年ワールドカップの次のワールドカップ。対戦相手が決まったほうが、より具体的に策を練れる。

イングランド・アルゼンチンという2つの非常にパワフルな国とあたることになった。セットピースも強く、フィジカルな相手との試合はチャレンジでもある。でも準備時間は3年あるし、我々は2チームと全く違ったラグビースタイルなので、相手にとっても難しいのではないかと思う。そういう意味ではイーブンではないか。

決まっていない2か国についても、日本もついこの間までティア2にいた。成長しているチームが来ると思うので、どのチームが来てもリスペクトを持って戦いたい。

 

ーー今後どのように代表を強化していくのか。またワールドカップでの対戦相手を見据えた選手選考になっていくのか

2019年のワールドカップが終わってから次の強化策を考えていたが、新型コロナの影響で全てストップしてしまった。今この段階で一番大事なのは、選手たちをラグビーに戻す、ということ。トップリーグが開幕するし、ブリティッシュ・アイリッシュ・ライオンズとの試合もある。一度限りのゲームにはなるが、日本がライオンズと対戦できることは非常に素晴らしいこと。しっかりと準備をしていく。

その他の試合についても具体的に決まってくれば、本格的に再スタートが切れる。日本の選手たちは、部活文化で適応力がある。これから準備を進める上で、適応力が一つのキーになると考える。

またサンウルブズは選手強化面において非常に成功した。同等のものが2023年に向けて必要なことは確か。スーパーラグビーはコロナもあって大きく変わろうとしているので、スーパーラグビーに戻るという選択肢はあまり現実的ではないと思うが、それに代わる同様の機会は絶対に必要。トップリーグだけで充分だとは思っていない。テストマッチ期間が延びる、というオプションも含め話し合われているのではないか。

選手選考については2019年時と同様、まずはトップリーグでアピールをしてもらって、それを我々が評価する、というプロセスは変わらない。ただ前回は全く知らない選手たちばかりだった。今回は、2019年を共に戦った経験のある選手たちがいる。堀江選手やリーチ選手、若手でいうと姫野選手たちも自信を持って2023年活躍してくれると思う。

 

ーー具体的に強化したい部分は

ジャパンのラグビースタイルはフリーフローでスピードがあってスキルフル。そこは変わらない。ただ相手はフィジカルなチームになるので、スクラムやラインアウトなどのセットプレーやディフェンスを強化していかないといけない。相手も我々を分析し隙を攻められると思うので、選手選考含め適切にやっていきたい。

 

ーー2023年ラグビーワールドカップの目標は

バンド1・バンド2のチームは、どこも当然プレーオフ進出を目指す。そしてプレーオフに上がった次を考える。日本も今回、そのレベルに仲間入りすることができた。

当然プレーオフ進出を狙うにあたり、イングランド・アルゼンチンに勝てるチームを作らないといけない。従来からのティア1のように何十点差で勝つ、というよりは接戦を制していくことが必要になると思う。そこを見据えたチームの準備が必要になってくる。まずはプレーオフ進出、ベスト8を目指す。

 

ーー気になる選手や期待するポジションは。大学生の試合が現在行われているが、見ることもあるのか

日本ラグビーに関わるようになった2016年、帝京大学での姫野選手のプレーが今でも記憶に残っている。そういう意味で、現在大学でラグビーをしている選手たちが2023年の舞台に立つことに何ら違和感ない。大学ラグビーも観ることはある。具体的に個人名を出す段階ではまだないが、楽しみにしている。

福岡選手の代表引退は、素晴らしいラグビープレーヤーだったので個人的にすごく残念。大きな損失であることは間違いないが、医師を目指すという福岡選手の決断を尊重したい。過去を振り返ると、大畑大介選手や福岡堅樹選手といった似たようなプレースタイルの選手たちが出てきている。次の大畑選手、次の福岡選手となりうるアウトサイドバックスを探すことが私の仕事だと思う。

FWの選手でいうと、セカンドローの選手。昨年のワールドカップを戦う中で思ったのは、選手層の厚みが大事。選手の出入りもあるので、テストマッチを戦える選手をどれだけ抱えられるかが重要になる。

全体としては、スコッドがローテーションしながら、でもギュッとまとまったチームでなければならない。ポジション問わず、もう一歩選手層に厚みをつけていきたいと思う。

 

ーーイングランド監督のエディ・ジョーンズ氏は日本ラグビーと関わりが深い

心理的にも色々考える監督。我々のやろうとしていることを分かっている部分もあると思う。キッキングゲームを2019年に一度形にしたので、我々ももう一度適応させていきたい。

ーーアルゼンチンについてのイメージは

代表チームは国のために戦う。昨年のワールドカップでは、応援するファンの感情や情熱がすぐそばにあった、それが大成功した一因であったと思う。アルゼンチンは特にそういう要素が強いと感じる。

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