80分の物語
慶応義塾大:黄黒ジャージ、早稲田大:赤黒ジャージ
2年前の大学選手権。
ここ秩父宮ラグビー場で準々決勝を戦ったのは、慶応と早稲田の2校だった。
後半ロスタイムに早稲田が大逆転トライを決め、19-20で早稲田大学が5年ぶりの年越しを決めたあの日は、雨が降っていた。
2020年の準々決勝。奇しくも同じカードとなったこの日、雨は降らずも気温一桁の凍てつく寒空となった。早慶戦は、否が応でも競った戦いになる。プライドを懸けたこの一戦、年越しの切符を勝ち取るのはどちらのチームだ。
前半、会場を沸かせたのは早稲田だった。
開始5分のファーストスクラム。早稲田がボールを投入すると、危なげなくNo.8 丸尾キャプテンの足元にボールを運ぶ。そのままボールを持ちだせば、右のショートサイドを突いてトライを奪った。
ファーストスクラムから、キャプテンが一発で取ってくる。幸先の良い出だしに、選手たちにも笑顔が溢れる。
更に会場のボルテージが上がったのは、前半19分。
6番・相良昌彦選手がタックルで慶應のボールを弾かせれば、そのボールを拾ったのはこの試合初先発を任された早稲田12番・伊藤大祐選手。その場で慶應のディフェンダー2人を置き去りにし、50m超の独走トライを奪った。
伊藤選手、試合の序盤こそ堅い出だしだったものの、随所で大型ルーキーの片鱗をのぞかせる。伊藤選手の絶妙な「溜め」は、13番・長田智希選手との相性が良い。