50分の物語
城東:赤橙ジャージ、新田:紺ジャージ
最後のコンバージョンゴール。城東の選手たちは、手を合わせ祈りながら見守った。
壮絶な逆転劇だった。
下馬評では、四国のオータムブロックを勝ち上がってきた新田よりも、県代表として出場を決めた城東の方が優勢だろうと思われていた。
しかし、高校生というのは一週間でも見違える程の成長を遂げる時がある。いざ試合開始のホイッスルが鳴ると、壮絶なシーソーゲームとなった。取ってはとられ、また取ってはとられ。最大点差はなんと7点。両者の想いが、50分間で存分に表現された。
後半20分を過ぎた頃。5点をリードする新田陣営から、絶え間なく声が響いていた。「低く!低く低く!」「塊で押し返せ!!」
インゴール間際まで攻め込まれても、低く当たってボールを奪い返す。オータムブロックで試合経験を積んできた、新田の執念が光った。
しかし。ラストワンプレーでトライを取り切ったのは、城東だった。
ゴール直前、ラックでフェーズを重ねると7番・蔭岡史嵩選手が右に持ち出しグラウンディング。スコアを29-29とすると、11番・山本一颯選手がしっかりとコンバージョンゴールを成功させた。
ゴール成功の笛が鳴った瞬間、手を合わせて祈りながらボールの軌道を追っていた城東の選手たちはグラウンドに倒れ込む。
彼らはまだ、高校生。感情が真っすぐに伝わってくるチームは、やっぱり強い。
試合後、城東のコーチ陣は言う。「要所要所の自分たちミスが苦しんだ原因。修正点は試合中に明確になった。」
次戦・尾道との一戦に向け、準備は万端だ。