埼玉の頂は昌平に。「全ての埼玉県ラグビー部のためにも」|決勝 昌平v深谷【第101回全国高等学校ラグビーフットボール大会埼玉県予選】

試合展開 ~昌平高校~

昌平:緑ジャージ、深谷:水色ジャージ

「200点です。」

試合後、御代田監督は晴れやかな笑顔で言った。

これが、昌平ラグビー。

これこそが、昌平高校がやりたかったラグビーだった。


決勝戦に向けて気持ちを綴った旗は、試合中ベンチに飾られていた

開始3分。

キャプテンの北川拓来選手が縦に抜け、先制トライ。

「前が開いていけると思った」

センセーショナルな幕開けだった。

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キーワードは『ディフェンス』。

とにかく昌平はディフェンス、と監督も選手も全員が口にする。

その言葉通り、深谷のキーマンには常にダブルタックル。

フォワードやセンター陣は何度もリロードを繰り返し、外に振られたらキャプテンが走って2度3度、ピンチをしのいだ。

「ここ我慢だよ」

「敵陣に入れば大丈夫」

「俺らノーペナでいこう」

どうしたら昌平のラグビーを遂行出来るのか、グラウンドに立つ全員が理解していた。


回数も成功率も高かった笠井侃選手(13番)のタックル

試合を決定付けた3本目のトライは、用意してきたスペシャルサインだった。

トライを奪われた直後のキックオフを深谷がノックオン。

相手陣22mでマイボールスクラムのチャンスを得ると、ボールを持ってスクラムハーフの位置に入ったのはフルバックの北川キャプテン。

FWがスクラムを安定させると、掛け声に合わせて3人が一斉に動いた。

一度オープンサイドに走るように見せかけ、ブラインドサイドに方向転換。

フランカーからボールを受け取った北川選手、タックルを受けながらそのままインゴールまで走り切った。

元スクラムハーフ。

慣れ親しんた位置から奪ったトライには、素直に「めっちゃ嬉しかった」と話す。

そして「練習では、マークされるからパスを出すように言われていた。持ちすぎると怒られました」と笑った。

 

パスのタイミングも、ディフェンダーを少しずらしたランも。

チームとしては苦しかった、だけど自身のプレーとしては開花した準決勝を経て、どこかひとつ、次のレベルに進んだように感じる。

北川キャプテンはこの日、昌平が奪った3トライ全てに絡む活躍を見せた。

昌平が唯一苦戦したのはスクラム。

ファーストスクラムで、今大会初めて押された。

「下から突き上げるように組もうと修正した」と話すのは、1番の橋口博夢選手(2年生)。

最初の数本は3番側が押し込まれたが、次第に普段通りのスクラムが組めるように。

昌平が奪った3本目のトライは、スクラムを安定させられる自信があったからこそ出されたサインだった。

後半28分を回った頃。

昌平陣から聞こえた、「あと3分やり切れ!」の声。

ほぼ勝利を確実にしても、当たることを止めなかった。前に出ることを恐れなかった。

 

自分たちのラグビーを貫いた昌平高校。

2年連続3度目の全国高等学校ラグビーフットボール大会出場を決めた。

過去2回の出場は全て、2回戦でシード校(東福岡高校、大阪朝鮮高校)に敗れた。

これから先の目標は、ひとつ。

昌平高校初、花園での年越しだ。

「負けてしまった埼玉県のラグビー部の皆さんのためにも、埼玉県代表としてしっかり花園でプレーしたい。(北川キャプテン)」

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最後のノーサイド ~深谷高校~

何度タックルに入られただろう。

何度名前を呼ばれただろう。

「齊藤オープン」「裏は齊藤だけ」

スクラムの度にポジショニングをチェックされ、ダブルタックルが基本。

それでもボールを持ち前に出ることを恐れなかった齊藤雅也選手(11番)が、後半17分、チームに5点をもたらした。


「自分が抜けるためのサインを考えてくれた仲間のためにも、トライを取り切らないといけないと思った。」お尻には『速』の文字も

深谷の選手たちが発し続けたキーワードは『笑顔』。

苦しい時も笑顔で。苦しい時だからこそ、笑顔で。

8点のビハインドで迎えたハーフタイム終わり、笑顔を見せながら円陣をほどいた。

そして、一際大きな声で叫んだ「花園行くぞ、花園!」の声。

気持ちは全く折れていなかった。

体はボロボロだった。

試合終了が近づく程グラウンドに倒れ込む人数は増え、起き上がるのもやっと。

それでも選手たちは、ボールを見たら走り出す。

最後までボールをもらいに行く、体を当てに行く。

その姿勢こそが、フカコーラグビーだった。

届かなかった、あと15点。

試合後観客席への挨拶を終えると、グラウンドに深く、そして長く一礼した宮下拓也キャプテン。

涙が止まらない仲間を支えながら、自身の目も赤い。

やり切った思いと、悔しさと。

良いバランス点を見つけるには、もうしばらく時間が掛かるだろう。

コンバージョンキックを担ったのは、春からスターティングメンバーとして出場し続けていた1年生の飯塚選手。

ペナルティゴールを2本、コンバージョンゴールを1本、外してしまった。

普段なら外さないであろう位置からのPGも、ポストに当てた。

試合後は涙を流したが、これもまた、ラグビー。

この日感じた悔しさは、深谷高校のラグビーを進化させるエネルギーになるはずだ。

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↓試合後のインタビュー動画はこちらから↓

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