The side of 三重ホンダヒート
試合前のウォーミングアップが終わり、ロッカーへ戻る直前。
9番・根塚聖冴選手は、膝に手をつき、しばらくグラウンドを見渡した。
「このグラウンドで戦えることが楽しみだった。」
表情には、幾ばくかの笑みが浮かんでいるようにも映った。
チーム全体の緊張が、湿気に満ちた空気とともに伝播してくるような試合の入りだった。
落ち着いてボールに絡めず絶好のジャッカル好機を逃すと、デリバレートノックオンで前半2分に1枚目のイエローカード。
前半37分にもゴールライン際での攻防でイエローカードが提示され、キャプテンが10分間グラウンドから退いた。
苦しい前半。
「前半は少しチームとしての硬さが出たと思う」と話したのは、7番・古田凌キャプテン。
ペナルティも多くなり押されたことで後手を踏んだ、と続けた。
ファーストスクラムではペナルティを獲得
後半からは一転、三重ホンダヒートらしいアタックとディフェンスが随所で示される。
「タックルでも一人ひとり全員が体を張り、自分たちのラグビーを体現してくれた」とは上田泰平ヘッドコーチ。
『気持ち』で、徐々にペースを掴み出した。
しかし後半最初のトライはNECグリーンロケッツ東葛。
GR東葛7番・アセリマシヴォウ選手にタッチライン際を走られると、そのままトライを許す。
ほぼ独走状態。
にも関わらず、最後まで諦めることなく逆サイドから全速力で戻りタックルに飛び込んだ選手がいた。
闘志みなぎる9番、根塚聖冴選手。
「仕留められると思っていた。タックルを失敗してしまって、単純に悔しかった。」
この日何度も相手選手に飛び付き、ラックサイドを駆け抜けチャンスメイクをし続けたスクラムハーフは、悔しそうな表情を浮かべたまま暫く膝をついた。
差は開いた。けれども後半だけ見れば7-7の同点。
「次に繋がる形でゲームを終えてくれた。選手のことを誇りに思います。(上田HC)」
次週、花園ラグビー場で戦う第2戦で勝ち点5を獲得し、24点差以上で勝利すればディビジョン1へ昇格となる。
もちろん、簡単な道のりではない。
だが、信じ応援してくれるファンはたくさんいる。
「もう一回チームとしてやり直し、次は勝てるようにチーム一丸となって勝利したい。(古田キャプテン)」
今度こそ、80分通して三重ホンダヒートらしいラグビーを。
幻となった後半最初のトライ後の円陣にて。高い熱量で仲間に声を掛けるのは11番・尾又寛汰選手。バックスラインを整備する声を大外から出し続け、後半27分には念願のトライをもたらした
トライを取られた後、真っ先に「みんな集まろう!」と仲間に声を掛けたのは16番・白濱弘章選手と17番・藤井拓海選手