東京サンゴリアス
黄金の10番を背負い戦った、初めての決勝戦。
「負けちゃったんで。結果が全てです。」
田村熙選手は、静かに話し出した。
埼玉ワイルドナイツの優勝インタビューが行われている裏で、田村選手は倒れ込んだ飯野晃司選手の足のケアを率先して買って出た。
トレーナーにその役目を交代すると、そのままダミアン・マッケンジー選手のもとへと歩を進め、肩を組む。
テビタ・リー選手に握手を求めた後、堀越康介選手といくつか言葉を交わした。
ノンメンバーたちがスタンドから降りてくると、一番最初に寄って行ったのも田村選手。
視野の広さが、なんともスタンドオフらしい。
思い返せば、2018年12月に行われたトップリーグ決勝戦。
神戸製鋼コベルコスティーラーズ(当時)に大敗を喫すると、スタートからゲームメーカーを務めたマット・ギタウ選手はグラウンドの隅でスパイクを脱ぎ、座り込んだ。
そこに身を寄せたのが、田村選手。当時サンゴリアスに加入し2年目、兄のように慕っていた選手の悲痛にも寄り添った。
あれから3年半。
今シーズンは、チームの戦術を組み立てる司令塔として、全12試合に先発出場。
悔しさは、比べ物にならない。
「チーム、選手は本当に頑張っています。そこの結果に応えられなかったことが申し訳ないですし、サンゴリアスがなかなか優勝出来ていないので。これだけの選手がいて、来年は何とかしたいです。」
サンゴリアスの好きな所を聞くと「やっぱり、楽しいラグビーをする所」と迷いなく答える。
「負けていても、応援してくれる方が多い。そういう所に応えられるようなチームでいなきゃな、と思います。」
だからこそ、応援し続けてくれるファンへの想いも新たにする。
「いま、本当にリーグのレベルが上がってきています。その中でもサンゴリアスがサンゴリアスらしく勝つために、頑張りたいと思います。」
インタビューの最後、決勝の舞台に立った62分間を楽しめたか、と問うた。
「もっと出たかったです(笑)」
朗らかに、明るく、前を向いて笑顔で答えた田村選手。
2017年以来遠ざかっている、チャンピオンの座。
来年こそ80分間ゲームメイクし、サンゴリアスがサンゴリアスらしく、頂点に。
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