早稲田大学
監督として2年目の対抗戦を迎えた、早稲田大学・大田尾竜彦監督。
今年は、チームの作り上げ方を変更した。
「昨シーズン僕が一番感じたことは『優勝するチームはこの時期から伸びる』ということです。秋から伸びる、ということをすごく感じました。例えば昨年の帝京、対抗戦初戦は少しチグハグでしたよね。だけどシーズン終わってみれば、結果別のチームになっていた。
それは彼らに伸びる材料がいっぱいあって、それをどんどん精度を高め伸びていくことで、選手が自信をつけ結果が出た。凄いサイクルなんだな、と思い見てきました。
昨年の今の時期の早稲田と、今年の今日時点での早稲田とを比べると、昨年の方が全然完成度が高いんです。ただし今年の方が、スクラムにしろディフェンスや接点にしろ、これから先伸びていく材料というのは、今年のチームの方があると思います。
なので計画としては『今の時期にどれだけ出来ているか』よりも『この時期にどれだけ強みとなり得るパーツを作れたか』という所で今日を迎えています。そういう意味では、言い方は少し変なのですが、意図的に完成度を今の段階では高めていません。それ以外の所にフォーカスしているので、そういうチーム作りの計画性の違いが今年はあると思います。」
荒ぶるを奪還するために、ゴールを見据えたマイルストーンをいくつも置いていく。
しかしその置き方やそれぞれの達成数値は、年度によって異なる。今年は、昨年よりも『のびしろ』に重点を置いた配置がなされているという。
対抗戦初戦という一つの節目を迎えた相良組においては、その達成度合いを「安心して見ていられた」という言葉で表現した。
安心して見ていられる状況を作った選手のうちの1人が、プレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得したルーキー・野中健吾選手である。
「彼の良い所は、状況判断とラインコントロール。それを可能にするのが、ボールが来るギリギリまで相手のことを見ている、ということです。
例えば今日、前半1つ目のトライシーンでは、守屋が少し浅かったんです。あそこで野中も浅かったら、多分捕まっているんですよ。でも野中は、そこでためることが出来る。彼の一番の特徴はそこですね。もちろんコンタクトも強いですしパスも上手いですが、やはりラインに入った時の『どこにボールを回していけば一番良いか』ということを分かりながらそれに一番相応しいラインのコントロールが出来る。今日はそこを発揮してくれたと思います。」
一方今季からフッカーにコンバートし、2番としては対抗戦初出場となった佐藤健次選手は、自身が最前列で組んだスクラムの手応えについて「一貫性をもってスクラムを組めていない。完成度としては50%」と表現した。
残りの50%が、監督が言う所の『のびしろ』である。
ボールをもらう、要求する所が3列と1列で違う。もう少しチャンスメイクできるようなセットをし、ボールをもらう工夫をしたい。守屋と話し合っていきます。(佐藤選手)
大田尾監督から繰り返し発せられた『のびしろ』という言葉。
個人として、チームとしてのびしろを埋めていく作業が、これから行われていく。
完成形が見られるのは、きっと年を越した頃だろう。