60mins ~川越東~
関東大会予選を3位につけた川越東は、第3シードとして3回戦から登場。
この日、花園予選初戦を迎えた面々は、いつもより少ない人数で熊谷ラグビー場に現れた。
「定期考査が近いので、内申に関わる1・2年生はお留守番です。今日は3年生21人だけで試合をしに来ました」と話すは望月雅之監督。
ベンチにも監督1人。
激動の3年間をともに過ごした、21人の選手と1人の先生とで、勝負の秋を迎えた。
これが、3年生だけで戦える最後の60分。
左サイドでボールを持ったNo.8には、仲間から「行っていい」のコールが掛かる。
土居泰介キャプテンが一人抜けた先でもサポートはつき、オフロードを受け取ったLOがトライ。
3年間ともに時間を重ねた仲間とだから見せられるコネクションで、トライを量産した。
県内トップレベルの進学校。かつて大学受験を控えた3年生たちは、秋を前に退部する選手も少なくなかった。
それが、2年前の花園出場を機にラグビーを続ける文化が根付く。
今では当たり前のように、花園までラグビーを続けたいと願う選手たちになった。
入学した時からコロナとともに過ごしてきた学年。
結局、今年も菅平で合宿を行うことはできなかった。
それでも、この21人だから乗り越えられた3年間。
たとえ独走トライであっても、トライした選手には誰かしらが必ず笑顔で駆け寄る。
一瞬でも無駄にしまい、と全員がそれぞれの役割を笑顔で全うしながら、3年生だけの最後の60分間を楽しんだ。
この日7番をつけたのは、竹野谷悠作選手。これまであまり、公式戦の舞台に立つことはなかった選手だ。
後半の試合終了間際、竹野谷選手がグラウンド中央部でボールを手にすると、左手でボールを抱え、右手でゴールポストを指差し、およそ40mを力強く走り抜ける。
独走トライ。
グラウンドに立つ残りの14人だけでなく、ウォーターを務めていた仲間も、ボールボーイを担っていたチームメイトも、全員が駆け寄って祝福の輪に埋もれた。
川越東が15個目のトライを決めると、プレイスキッカーの土居キャプテンに向かって仲間から「ドロップ」の声が掛けられる。
ポール目の前のトライで得たコンバージョンキックを、90秒の時間を掛けずに蹴り上げて欲しい。
そしたらもう1プレー長く、この21人でラグビーができるから。
一秒でも長く、一瞬でも楽しく。
最後の花園予選初戦を、終始笑顔で乗り切った21人。
奪っては15トライの100点ゲーム。守っては零封で、最後の3年生ゲームを記録と記憶に遺した。
最後のノーサイド ~進修館~
ベスト8を懸けた戦いは、春の王者と。
苦しい時間になることは分かっていた。それでも最後まで、1トライを目指して戦った進修館の選手たち。
「1トライ決めよう!」トライを取られた後の円陣で、何度も大きな声が飛んだ。
今年の3年生が入学した当初は、緊急事態宣言により部活動は停止。
ようやく始まったかと思えば、すぐにまた停止。
なかなか、安定してチーム作りを行うことができなかった学年だ。
2年前の春、入部したのは5人の1年生たち。
2年後の秋、誰1人欠けることなく、最後の試合まで辿り着いた。
いや、間違いではないが正しくもない。正確には、この3年間で仲間を3人増やした。
合計8名の3年生で迎えた、ラストゲーム。
結果的に1トライ取れなかったことは悔しい。だけど「ワンチームで戦い抜くことができた」とは山本悟キャプテン。
「この学年の結束力はどのチームにも負けなかったと思う。この結束力を、次世代にも受け継いでほしい」と、後輩たちへバトンを渡した。
今年、進修館高校として3年ぶりに菅平に上がることができた。
「その頃から、ラグビーに前向きになった姿を感じられるようになりました。楽しむ姿勢がしっかりと生まれて。菅平合宿を通し、成長した姿を感じられた」と梨本雄太監督は笑顔で話す。
きっとこの3年生たちを見ていた下級生たちは、来年も、前向きにラグビーに取り組むことだろう。
こうやって、チームの文化は来年へと受け継がれていく。
↓試合後のインタビュー動画はこちらから↓
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