60mins ~熊谷~
「あれだけエリアを取って、あれだけボールを支配して、あれだけゴール前まで行って。だけどトライを取れなくて、最後は僅か5点のリードで自陣5mでの相手ボールラインアウト。
一番負けるパターンの試合、と言ってもおかしくないくらいのゲームでした。」
最後は選手たちを信じていた、と横田典之監督は話す。
開始直後から緊張感漂った熊谷ラグビー場Bグラウンド。
最初のスコアは熊谷。前半17分、FWが押し込みトライを奪う。
しかしその後はミスと相手の好守に阻まれ、トライまで結びつけることができない。
終始エリアは敵陣で。ボール支配率も高かったが、決め切れない苦しい時間が続く。
5-0で折り返したハーフタイム、横田監督は選手たちに声を掛けた。
「誰と戦ってるんだ?」
キャプテンの大沢恵太選手は、寄居中学校出身。対戦相手である本庄第一の監督は、2年前まで同中学校でラグビー部の指導にあたっていた新井昭夫氏である。
いわば、恩師との対戦。大沢キャプテン以外にも、中学時代からラグビーをしていた選手たちはもちろん相手の監督を知っている。
そんないつもと違う環境下で戦う選手たちに、横田監督は『向かい合うべき相手』を改めて問い直した。
後半も、一筋縄ではいかない展開が続いた。
チャレンジが実を結んだのは後半も20分を過ぎた頃。ラインアウトモールを起点に2本目のトライを奪うと、ようやくリードを10点に広げた。
しかし直後、ブレイクダウンでのペナルティからクイックスタートを許し、テンポ良くトライを与えてしまう。
残り5分で、点差は僅か5点。
熊谷陣からは「前を向け!」と自らを鼓舞する声が響いた。
後半ロスタイム、ラストワンプレーでのペナルティは熊谷。
自陣5mでの相手ボールラインアウトを許してしまうが、プレッシャーを掛け、ノットストレートを誘った。
マイボールスクラムを落ち着いて蹴り出せば、ノーサイド。
ロースコアゲームを制し、見事3年連続のベスト8進出を果たした。
準々決勝の相手は、ディフェンディングチャンピオンの昌平。
「今日は何回もゴール前までは行けた。フィニッシュの精度を上げること、中盤の戦い方をもう少し整理すること(横田監督)」と改善点は明確だ。
大沢キャプテンも「僕たちはチャレンジャー。コンタクトで逃げず、ファーストプレーから仕掛けていきたい」と前を向く。
チーム一丸となって、王者に挑む。
最後のノーサイド ~本庄第一~
新井昭夫監督が本庄第一高校に赴任したのは、いまから2年前。
それまで指揮を執っていた寄居中学校の選手たちを中心に、一からチームを作った。
だからキャプテンは2年生。
3年生も1名いるが、「高校2年生の時に素人で入ってきてくれた」選手である。
杉田猛キャプテン(2年生)は言う。
「自分たちのバカに付き合ってくれた先輩を、熊谷ラグビー場のAグラウンドに連れて行きたかった。」
細かなスキルは目を見張るものがあった。
スクラムハーフからのボックスキックも、相手のトライをヘルドアップにする技術も、日頃の鍛錬を感じさせた。
粘りのディフェンスから一気に攻撃に転じた勢いあるトランジションは功を奏し、トライへと結びつく。
しかし、1トライ差は埋まらず3回戦敗退。
準々決勝からの戦いの場であるAグラウンドには、あと5点、届かなかった。
来年こそは、Aグラウンドで。いや、花園を目指して。
「今の状態を一回壊して、全部一から、細かな所から積み上げていきたいと思います。(杉田キャプテン)」
青き旋風が、新人戦から巻き起こるはずだ。
↓試合後のインタビュー動画はこちらから↓
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