関東学院大学
試合開始早々2連続でトライを献上した後の、自陣5m付近での相手ボールラインアウト。
ボールが投入される直前、この日ゲームキャプテンを務めた丸山央人選手は、大きな声で仲間に声を掛けた。
「楽しもう!」
関東学院からすれば、ピンチの場面。そこで15人をまとめるゲームキャプテンから掛けられた言葉は、「楽しもう」だった。
丸山選手は言う。
「僕たちは、東海大学さんが格上だと捉えて練習してきました。そんな中でも試合中、僕たちのラグビーが通用する部分を感じたんです。
だから、東海さんとのラグビーが楽しくて。ラグビーが楽しくて。
原点は、ラグビーを楽しむこと。
点を取られて楽しむのではなく、僕らが準備してきたことをやり切ることで、格上の東海大学さんとのゲームがもっともっと楽しくなればいいな、と思いました。
劣勢状態では、チームがネガティブな気持ちになってしまうこともあると思います。だけどそこで今日ゲームキャプテンをやらせてもらっている僕が、チームをポジティブな方向に向かせられればという思いで『楽しめ』と声を掛けました。」
丸山選手にとっては地元・群馬での凱旋試合となった今節。
スタンドでは、明和県央高校の後輩たちが手製のボードを掲げ、応援していた。
試合を楽しむ、ラグビーを楽しむ姿勢をプレーで表現したのは、丸山選手だけではなかった。
フランカーの宮上凜選手。
身長165㎝、体重80㎏と小柄ながら方々に顔を出しタックルを見舞う姿を、板井良太監督は「ファイトのかたまり」と表現する。
現在、大学3年生。
佐賀工業高校を卒業後、1年次からリーグ戦に出場していたが、シーズン半ばに前十字靭帯を断裂。2年の夏に復帰したものの、なんと復帰初日の練習で再びの断裂に見舞われた。
「元々、大学に進学するつもりがなくて。高校卒業後は就職しようと考えていたのですが、板井監督に拾っていただきました。
そのおかげで、ここに立てています。この舞台に立つためにやってきたので、この舞台に立てて、この舞台で使って頂けることが嬉しいです。」
今夏に再度の復帰を果たすと、今季はこれまで4試合に先発。両膝に巻かれたテーピングとともに、自らよりも大きな相手に挑み続けてきた。
「精神的支柱になりつつある男。先輩たちからの信頼も厚く、なくてはならないタックラー(板井監督談)」である。
服部選手のトライ後、真っ先に駆け寄った宮上選手
試合を、ラグビーを楽しむ、を実践する関東学院の選手たち。
「学生たちは東海大学を相手によくタックルしました。後半残り10分過ぎに糸が切れた場面もありましたが、それまでは攻める気持ちも見えた。
絶対、次に繋がるゲームをしてくれたと思います。(板井監督)」
残るリーグ戦2試合も、ラグビーを楽しみながら今季初勝利を目指し戦う。