60mins ~東海大相模~
前半早々に2本のPGを許し、6点を追いかける展開で始まった決勝戦。
序盤、ペナルティが目立った。
しかし大崩れしなかったのは、光るディフェンスの賜物。
5番・上村太陽キャプテンの刺さるタックルに、9番・石川裕大選手の相手を押し下げるタックル。
1年生ウイング・恩田暖選手のドミネートタックルなどで、攻撃の芽を摘んだ。
「気持ちでタックルに刺さってくれた」とは三木雄介監督。
ディフェンスから流れを掴んだ。
すると前半23分、敵陣22mでラインアウトを獲得するとインゴールに迫り、桐蔭学園のキャリーバックを誘う。
5mスクラムでFKを獲得すれば、No.8佐野睦海選手がクイックタップから押し込んだ。
10番・野口柊選手のコンバージョンゴールも成功し、7-6。
1点のリードで、前半を折り返す。
後半も桐蔭学園の得点からスタートする。
後半7分、敵主将のトライで7-13。逆転を許した。
インゴールで組まれた円陣で大きな声を出すは、東海大相模のキャプテン・上村太陽選手。
「規律守ろう!そこだけ!何にも怖くない、行こうぜ!」
遡ること1日前。
上村キャプテンは、宿泊先のホテルでチームメイトに熱い気持ちを伝えていた。
「今まで桐蔭学園さんという高い壁を超えられず、先輩方は引退してきた。過去の成績から見ると、自分たちの代がこの高い壁を超えられる最も近い位置にいる。
まずは勝ち切って、『神奈川県1位・桐蔭学園』という歴史を『神奈川県1位・東海大相模』に変えよう。」
グラウンドに立った選手たちの腕には、マジックペンで書かれた「勝利」や「気迫」、「Tasuku」の言葉が並ぶ。
それらの想いはプレーに表れ、そしてトライへと結びつく。
粘って粘って、反則をせずに何分も何フェーズも攻め続けた後半26分。
4番・山本圭悟選手が押し込み、2トライ目を決めた。
コンバージョンゴールも成功し、14-13。再びリードを奪う。
差は僅か1点。残り時間を確認しながら、FWが体を当てるゲームプランへと突入した。
一時はペナルティを取られ万事休すかと思われたが、相手の鬼気迫るアタックをインゴール目前で止め、ペナルティを奪い返す。
そしてついに、歴史を変える瞬間は訪れる。
15番・宮本寛隆選手が蹴り出すと、長いノーサイドの笛が吹かれた。
両手を挙げ、声にならない声で喜び合う東海大相模陣。
上村キャプテンは、膝をつき、右手の拳を握りしめた。
「嬉しい、ただそれだけです。」
ついに変えた歴史。実に43年ぶりの『神奈川県1位・東海大相模』に抱く感情は、嬉しいで充分だった。
上村キャプテンは言う。
「桐蔭学園さんは、常に高い位置にいる存在です。高校日本代表候補もたくさんいて。そういう『高い壁でいてくれたこと』に感謝しています。
自分たちはその高い壁を超えることができたので、桐蔭学園さんの分までしっかりと、神奈川県代表という使命を背負って花園に行ってきます。」
試合後、決意を新たにした上村キャプテン。
その両手には、小さな段ボールの箱が握られていた。
「桐蔭学園さんに(大怪我を負った笹川)佑の募金を集めて頂きました。桐蔭学園・松田キャプテンから『俺らの分まで頑張ってくれ』という言葉とともに託された募金箱です。
この想いを潰さず、自分たちはもっともっと頑張っていきます。」
東海大相模は神奈川県代表として、12月27日から花園ラグビー場で行われる第102回全国高等学校ラグビーフットボール大会に挑む。
試合後コメント
三木雄介監督
僅差で勝つ、こういう展開しかないだろうなと考えていました。
勝因は、子どもたちが気持ちでタックルに刺さってくれたことに尽きます。
花園では、責任を持って神奈川県を代表して戦わなければいけないと思う。今の状態では全国では通用しないと思うので、もう1段階2段階上げられるように頑張ります。
今日は足をつっている生徒もたくさんいました。基礎基本の所から見直して、もう一段バージョンアップできるように頑張ります。
上村太陽キャプテン
自分たちの目標は、花園優勝。神奈川優勝という結果に今日は喜んで、明日から切り替えて次の目標に向かいたいと思います。まだ満足してはいけないと思っています。
本来在るべき目標にはまだまだ足りないところがあります。いまのままでは、到底花園優勝には届かない。
もう一度フィジカル面や戦術面を見直したいですし、今日目立ったミスや、まだ出来ていないこともある。やることは山積みなので、時間があるようでない。
花園に向けて不備がないよう最高の準備をし、もう一度見つめ直して再スタートしていきます。