60分の物語
朝明：白ジャージ（2nd）、尾道：白青ジャージ（2nd）
「苦しくなっても、困っても、俺が絶対に笑顔でおる。苦しい時、足が止まった時には、絶対俺が笑顔になっているから。俺の方を見て欲しい。」
朝明高校14番・内山陸キャプテンは、試合前、仲間に宣言した。
尾道の機動力溢れる重量級FWに翻弄された前半。一気に5トライを奪われた。
それでも内山キャプテンは、仲間に声を掛け続ける。
「しんどいの、分かってんねんから」
「勝てる、勝てる！」
「逃げたらあかん、戦えてる！」
苦しい時間を乗り切るための言葉たちは、やがて力となる。
後半23分。敵陣深くで立て続けに2本のペナルティを得ると、相手陣5mでのマイボールラインアウトを獲得。
18番・市川皓喜選手が「獲るよー！」と叫べば、落ち着いて投げ入れられたボールを獲得し、No.8岡田大和選手が左隅にグラウンディングした。
難しい位置からのコンバージョンゴールを蹴り込んだのは、内山キャプテン。
綺麗な軌道で、しっかりと2点も掴み取る。
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なんとか1トライを、と願ったのは、朝明高校だけではなかった。
応援に駆け付けたのは、一足先に試合を終えた岐阜県代表・岐阜工業高校。
ふだんから合同練習や練習試合を行う間柄の両校。朝明がトライを決めると、岐阜工業の選手たちは手を叩き「ナイストライ！」と声を掛け、祝福した。
内山キャプテンは「ライバルからも応援されている。応援されたからこそのトライだったと思う」と喜んだ。
しかし、高校日本代表候補を有する尾道に突き放され敗退。
笑顔で挑んだ挑戦は、幕を下ろした。
内山キャプテンは言う。
「自分たちは1年生の頃からコロナに振り回されて、でも3年生になってようやく、遠征や合宿ができるようになった。2年生までは本当に苦しかったけど、この1年間で成長することができたと思う。」
今はただ、勝ち切れず悔しい気持ちでいっぱい。
悔しさが、涙となって溢れ出る。
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＊＊＊
尾道は、伝統とする激しく前に出るタックルでペースを掴む。試合序盤からゲームを支配した。
100㎏超の体重を有しながら、機動力を見せつけたのは1番・檜山蒼介選手。開始2分の先制トライで、チームに勢いをもたらした。
元々はNo.8。中学時代にはバックスだった経験を活かしたフィールドワークが光った
10番・青田宗久キャプテンは試合を振り返って「今日は尾道のDFがはまった」と笑顔を見せたが、それでも「1トライ取られてしまったことは改善点」と気を引き締める。
「課題はブレイクダウン。アタックの所でペナルティを取られることがあったので、次の常翔戦に向け修正していきたい。」
60分間明るくプレーを続けた尾道。狙うはただ一つ、シードバックだ。
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