60分の物語
仙台育英:黄黒ジャージ、東海大静岡翔洋:白青ジャージ
17対17の同点で迎えた後半30分。
東海大静岡翔洋は、ペナルティを獲得すると敵陣7mの位置までタッチキックを蹴り込みエリアを進めた。
沸く観客席。
キャプテンでNo.8の名取稜太郎選手は、仲間の方を振り返ると、大きく両手を広げた。
FWを呼び寄せ、固く円陣を組む。
勝負のラインアウト。
ここで得点をしなかったら、トライ数差で敗退が決まる。
熱く、気持ちを伝えた。
「もしここでトライを取れなかったら、俺たちのラグビー人生は終わる。ここで死ぬ気で押して、長いこともっと、ここでラグビーをしよう。」
真っ直ぐに投げ入れられたボールをしっかりと確保し、そのままモールを形成。
力の限りに押し込めば、6番・田村仁選手がボールを地面につけた。
大逆転のトライだった。
名取キャプテンは言う。
「1年間、ずっとフォワードで、モールで勝つことにこだわってきた。この1年やってきたことが間違いじゃなかった、と感じました。」
ほんまによかった。ありがとう。
そう、仲間に声を掛けた。
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10点のビハインドで迎えた後半、仙台育英は3連続トライで一気に逆転。後半25分まで、17-10とリードを得ていた。
しかし最後の5分間で許した2トライ。
悔しすぎる敗退、涙に暮れた。
チームを率いたのは、9番・今聡キャプテン。
ハドルの中で『笑顔、笑顔!』と仲間に声を掛け続け、雰囲気作りを徹底した。
もちろんキャプテン自身も、笑顔を絶やすことはなかった。
最後まで貫いた信念。
笑顔で、花園を去った。
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